おや、本格ではないか

 引き続き、「黄色いなめくじ」です。今回も後半部の展開に触れます。犯人など真相は明かしませんが、前情報なく楽しみたいかたはご注意ください。



!!!!!!!!!!!!




 死体と遺留品が出てきたところまでは前回、書きました。被害者の持ち物からは、お金が抜かれていました。最有力容疑者とみられる少年には窃盗の前科があり、心証はかなり悪いです。

 ここから「心」ではなく「科学」を重んじる捜査・推理が始まります。この推理の過程でようやくなめくじが登場するわけです。これは書いてもよかろう、なぜならばタイトルにあるのだから、ある状況が出た段階でなめくじと関わってくるのは明らかだからです。

 注目したいのは、なめくじに関わるデータから導き出される推理の見事さ。もっと言えば、結論にいたるまでの過程の見事さ。「おぉ本格ミステリじゃないか」と嬉しくなるのです。

 序盤の少年の言動に「奇妙な味」の匂いを嗅ぎ取ってしまった私のような読者は、この本格ミステリっぽさに戸惑うのではないでしょうか。もちろん、意外な手がかりから論理的な結論が導き出されることに喜びを感じるものとしては、嬉しくもあるのですが。

 どうも新版4集に「奇妙な味」系統の作品が集中しているのが、匂いを嗅ぎ取ってしまった一因であるようにも感じます。アンソロジーの並べ方は難しいな、と感じるのです。

 新版ではせっかく発表年代順に並んでいるので、時代の変遷と共にミステリの変化を語ることをやりたいのですが、どうもうまくいきません。特に4集は難しい。これは黄金期を向かえ、ジャンルがある程度までは確立してしまって変化を感じ取りにくいということが関係しているのかもしれません。

 次の5集になると、ちょっと変な作品が出てきます。

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