日本人に伝わるか

 前回に続く形でクイーン「いかれたお茶会の冒険」について、ネタばらしで書きます。前回と同じことを書きますが、この作品“The Adventure of The Mad Tea-Party”の翻訳はいくつかバージョンがあり、邦題も複数存在します。その点もご注意ください。わりとよく知られた翻訳の邦題が現代からすれば不適切、古典文学の巻末によく用いられる言葉を借りれば「表現に穏当を欠く」ものであるため、ここでは明記しません。その点もご了承ください。




!!!!!!!注意!!!!!!!


 この先、エラリー・クイーン「いかれたお茶会の冒険」(別題あり)の真相・犯人など内容について言及します。未読のかたはご注意ください。






(ここからネタばらし)




 五つの贈り物をAとB、二つのグループにわけました。「リチャードの運動靴の靴紐」「ジョナサンのオモチャの船」「封蝋で封をされた空の封筒」「二つのキャベツ」「チェスのキングの駒二つ」。これがグループA。「靴(シューズ)」「船(シップス)」「封蝋(シーリングワックス)」「キャベツ(キャべジズ)」「キング(キングズ)」がグループB。

 Aから「セイウチと大工」の詩、「靴だの、船だの、封蠟だの、それからキャベツだの、王様だの(オブ・シューズ・アンド・シップス・アンド・シーリングワックス・オブ・キャべジズ・アンド・キングズ)」(※訳文は『世界推理短編傑作集4』P302より)にたどりつける人がどれくらいいるかがミステリのバランスでしょう。

 アリスの物語に詳しければBから「セイウチと大工」への連想はスムーズでしょう。問題になるのはAからBに進めるかどうか。言語が違うということもあり、大半の日本人には難しいはずです。

 アリスの物語の存在はジョナサンの誕生祝いの出し物やタイトルから示唆されているので、英米圏の人々には、そう難しいことではないともいえそうです。

「セイウチと大工」までたどり着けないと、『鏡の国のアリス』原題『スルー・ザ・ロッキンググラス』、「鏡を通り抜けて」というメッセージにも進めません。ここも日本人には難しいところで『不思議の国のアリス』まで読んでいても『鏡の国のアリス』は読んでいない人も多いでしょうし、原題を知っている人は限られるはずです。

 いろいろと周辺情報をかためていかないと、「いかれたお茶会の冒険」の工夫を知るのは難しいところがあります。今回、私なりに読解を試みましたが、まだまだクイーンは仕掛けていそうです。



(ネタばらし ここまで)

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