二大女王への疑惑

 今回から「疑惑」(1933年)を取り上げます。

 まずは基本情報から。作者はドロシー・L・セイヤーズ。ガイドブックなんかではクリスティーと並ぶ二大ミステリー女王とされていますが、現代の日本の読者の感覚では、ピンとこないかもしれません。

 これはセイヤーズの問題ではなく、あまりにクリスティーがすごいというか、大きな新刊書店だと、全作文庫の棚に作品があるんじゃないかと感じるほど、クリスティー作品は現代の日本でも手に取りやすくなっています。

 これはクリスティーに飛び道具的な作品、『そして誰もいなくなった』と『アクロイド~』があるからかもしれません。

 いろいろとクリスティーを読んでいくと、さきに挙げた2作品は決してクリスティーの本質そのものという感じが薄くなっていくのですが、あの手のインパクトの強さには、

やはり時の流れに抗えるしぶとさのようなものがあります。

 クリスティーという作家のヤバさは、新作映画公開を控えた『ナイルに死す』とか、ちょっと地味ですが『五匹の子豚』なんかのほうによく現れている気がします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る