だぁれが怖いかコック・ロビン

 表題はマザーグースから持ってきましたが、「銀の仮面」はマザーグースミステリではありません、と断ったところから始めます。

 いろいろとこの作品の評価をネットや本で調べたのですが、よく出てくるのは「後味が悪い」と「怖い」といった言葉。確かに、このお話は怖いです。前に取り上げた「二壜のソース」も怖い話ですが、こちらも怖い。

 どっちのお話のほうが現実的に起こりうるかと問いかけたとき、多くのかたは「銀の仮面」を選ぶ気がします。私はちょっとどうかしているタイプなので、「二壜のソース」の方法はありえなくはないと感じてしまいますが。

 いや、よくある話ではないのです、「銀の仮面」は。ところが、昨今の日本の諸々の事情、高齢化や核家族化や、コロナ禍で露呈してきた公務員削減の余波みたいなものやらを鑑みるとありえない話でもないと感じてしまうのです。

 読んだかたにうかがいたいのですが、この物語の中で一番怖いのは誰だと思いますか?

 絵の美しさを理解できてもすばらしい絵を描くことのできない美青年ヘンリイ・アボット? 夫にちゃんと働けと言わない妻エイダ・アボット? なにも知らない小さな子ども? 

 エイダ・アボットの伯父と伯母だというエドワーズ夫妻? エドワーズ夫妻の友人らしきハーパー夫妻とその娘のアグネス?

ジャクソン・マギー? それとも、使用人のローズ?

 私はウェストン夫人だと思うのです。

 え? 誰? そんな人出てきたっけと思ったかたもいらっしゃるでしょう。わかります。「世間の人がなんといっているか、あなただってわかっているでしょう」と忠告をしてくれたのがウェストン夫人です。ソニヤの友だちです。

 いや、ウェストン夫人はまだいいほうなのかもしれません。メーベル・ニューマークやアガサ・ベンスンのほうが怖いのかもしれません。みんな、ソニヤの友人です。

 なんのこっちゃと思ったかたに最後に一つ、質問をして今回は終わることにしましょう。


 ずいぶんと会っていない友だちが今、どうしているかご存知ですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る