途中でわかってからの時間

ミステリの途中で真相が看破できてしまったとき、読者のみなさんは普通どう感じるのでしょう。

「はいはい、わかっちゃったよ、つまんねーな」なのか「わかったぞ! 私ってすごい!」なのか。

 ひねくれているマニアのかたがたは「こんな簡単に見抜けるとはさてはダミーの解決だな。もうひと捻り用意してあるに違いない」と気を引き締めるのか。

 あるいは自分でも書くという人は「外れててくれ、そしたらこのアイデアで一本書ける」と願うのか。

 たいがいの場合、真相を見破ったと感じた後は「答え合わせ」の作業になりがちです。

 この「二壜のソース」が奇妙なのは、途中で真相が「読める」ように書いていながら、読者は純粋に優越感にひたれないところです。「これって、そういうことだよな。嫌だな、そうだったら嫌だな」と普通は疑うことのない自らが弾き出した解答を「否定」というか「拒否」しながら、ページをめくることになります。

 この居心地の悪い時間は、早く真相に感づいた人ほど長くなるという実に底意地の悪い仕掛けがあるわけです。

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