現実とリアリティーと

「スペードという男」には、やたらと警察関係者が出てきて、彼らにもきちんと名前が与えられてると少し前に書きました。

 ハードボイルドが現実世界そのものかといえば実はそうでもないのですが、ある種の謎解き本格ミステリの箱庭的世界、絵空事の雰囲気よりは格段に現実に近い感覚を多くの読者はおぼえるでしょう。

 現実っぽさは生身の人間の「生臭さ」、もっと言えば、生身の人間関係の「生臭さ」が与えているのではないか。そのように分析しています。

 わりと謎解き本格ミステリの箱庭的世界は「脱臭」されていることが多い気がします。

 匂いを消すまでもなく、箱庭に配置されるのが人形だから、そもそも匂いがないとするシビアな捉え方もできるかもしれません。

 気をつけなければならないのは、ハードボイルドもフィクションである以上は脱臭とは反対になんらかの香りつけの作業をしている可能性。

 人間的な生臭さをパズルを解くには不必要とせずに、ジグソーパズルのピースの形の一つにしているという点で、ハードボイルドは並みの謎解きミステリーよりも数段、上をいっているのかもしれません。

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