死因は餓死
基本情報といいながら、作者ノックスのこと、それも悪口めいたことばかりになってしまいました。
各作品の初回には作者、あらすじ、発表年なんてものを紹介するのですが、発表年についてちょっと面白い話があることを知りました。新版の各巻の巻末にある戸川さんの「短編推理小説の流れ」で、興味深い推理が披露されています。
旧版では一九二五年、新版は一九三一年と発表年が動いています。この変更とセイヤーズに関するお話は、ぜひ実際にお読みいただきたく、ここでは触れません。
さて、あらすじです。百万長者ジャービソンの遺体が密室で発見されます。なんと死因は餓死。まず、この死因のオリジナリティだけでも素晴らしい。
遺産をめぐり動機のある人物たちはいるのですが、自然死ではないとしたら、どうやって「密室」で「餓死」させたのか。
いやいやいや、餓死だろ? 密室だろ? むしろ簡単じゃないか。
そんな声も聞こえてきそうです。むしろ、そういう反論を期待して、一つ重要なポイントを隠していたことを白状しましょう。
死体のあった密室内には、たくさんの食糧があったのです。
こうなると、もう一つの疑問が生じます。「食糧があるのになぜジャービソンは死ぬまでそれを口にしなかったのか」と。
密室ミステリの傑作として取り上げられることの多い本作ですが、並みの密室以上に複数の魅力的な謎が散りばめられているのです。有名な作品のわりにあまり分析されていない作品のように感じます。
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