信・望・善
推理小説と小説が分離していなかった頃、犯罪を扱う物語の主流は「勧善懲悪」でした。悪いことをするとバチが当たるよ、犯罪は割にあわないからよしましょうね、という教訓話の派生系であったわけです。
バリエーションを生み出さなければ、という作家側の働きなのか、いつまでも悪いやつが成敗される話ばかり読まされてもね、という読者側からの要請なのかはわかりませんが、次第に悪党が主役をはる、悪党側から見た物語というジャンルも出てきました。
わかりやすいのは、ルパン(あるいはリュパン)ものなのでしょうが、あれは完全犯罪の成功を描くのではなく、探偵役が泥棒というだけで基本的には名探偵もののフォーマットからは抜け出てはいないように思うのです。
ちょっとネタばらしになりますが、ホームズシリーズのなかには、ホームズ(とワトソン)が違法行為をしてでも、誰かを守るというお話があります。法律の限界とか、正義と法は必ずしも一致しないということを描くという狙いがあるのでしょう。
名探偵が法律を破るのも、泥棒が名探偵ばりの推理をするのも、「正義」を描くため。
一方、「信・望・愛」においては、犯罪者は探偵役ではありません。あくまで「逃亡者」。司法の手を逃れるためにどうしたらいいか、という問いかけに対する答えに「トリック」が出てきます。
このトリック、三人の犯罪者のうちの一人が思いつくのですが、実に乱歩好み。
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