気になる記述

 今回はこんな引用から始めることにします。


「犯罪の探偵方法には、完全なものがあるよ」

「なるほど。たぶん、あるかもしれない」と、ヘアはやさしく笑った。「だがね、トレヴァー、これはぼくの推測だが、きみのいう意味は、不完全な犯罪を探偵するための完全な方法はある、ということじゃないのかね?」


 ちなみにトレヴァーというのは、探偵役でヘアはその友人。いわば、ワトソンといったところでしょうか。ただ、記述者ではありません。

 引用した「不完全な犯罪を探偵するための完全な方法」とは推理小説だとも読み取れないでしょうか。いじわるく解釈を広げると、推理小説で描かれる犯罪は不完全だ、と言っているようでもあります。

 だから、私はこれまでの推理小説がなしえなかった「推理小説で描く完全犯罪」をお目にかけますよ。そう作者が言っているようにも思えるのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る