パロディが出てくれば

 推敲小説には、自己言及的なところがあるようです。

 それはミステリーのパターンを利用して引っかける形だったり、なかば居直るように「これはミステリーなんだから密室トリックを使う犯人を許してくれ」という形だったり、とさまざま。

 同時にパロディをやりやすい土壌があるとも言えそうです。

 ミステリー、こと本格ミステリには、型があります。

 型とは、お約束と言い換えてもかまわないでしょう。

 パロディが出てくるということは、ジャンルの輪郭がハッキリして、パターンや約束ごと、「あるある」が共有されていることです。

「完全犯罪」はパロディを狙って書いたものではないのでしょうが、結果として強烈なカウンターになっている点では、パロディともとらえられそうです。

 騙しとは別のベクトルで型を利用した作品が生まれるには、ある程度のジャンルの成熟が必要です。

 ただ、私には「笑わせるためのパロディじゃないよ、成熟? 笑わせてくれるね。こいつは推理小説とやらが袋小路に行き当たったことを嘲笑っているのさ」という声が聞こえるような気がするのです。

 私はカクヨムさんの利用者の多くには馴染み深いライトノベルの洗礼を受けていません。

 どうも「異世界転生」「チート」といったワードに対する「テンプレ」という言葉の否定的な用いかたには、「機械的トリックによる密室」「神のごとき名探偵」といったワードに対する「パターン」にも似た構図を感じるのです。

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