密室と毒

 密室と毒は、あまり相性がよくない印象を持っています。それは毒は服用のタイミングという時間差があるため、密室の堅牢性を揺るがすからです。

 抜け落ちる要素があるのは承知で、ざっくりとわかりやすく書くと、犯人不在の密室内で被害者自身が毒をのめば、簡単に密室ができます。謎のない密室です。密室に肝心なのは、単に部屋に鍵がかかっていることではなく、鍵などにより出入りできなかったはずだという不可解さや不可能興味があることです。

「イギリス製濾過器」も毒と密室なのですが、事件の様相が変わることで、うまいこと興味をつなげ、短編ならではのスピード感でラストまで乗りきっている印象。タイトルにもある濾過器にどうやって毒を入れるか、がメインの謎。真正面からのハウダニットなのか、密室は囮で違う方向から見えないパンチが飛んでくるのか。ぜひ一読いただきたい作品です。

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