容疑者の少なさは短編ミステリの足枷なのか

 引き続き「イギリス製濾過器」の考察です。なんだかケチをつける企画みたいになりつつありますが、私はこの作品大好きなのです。真相に怒る人もいるでしょうし、出会った時期が違えば私も否定派になったかもしれませんが、このぶっ飛んだ感じを愛せずにはいられません。

 短編ミステリーの弱点として、短さゆえに手がかりの分散が難しいことを前回、書きました。今回は「容疑者少ない」問題です。

 よくある短編ですと、語り手のワトソン役、謎を解く名探偵、死体、事件に探偵を巻き込むことになる人、とこれだけで四人を必要とします。容疑者は最低三人というか、短編では三人で必要充分な感じがします。

 容疑者一人一人に費やす紙幅がどれくらいのバランスかで、作品の良し悪しが決まるのかもしれません。確かに名前は出てるけど、こんなに描写が少なければ犯人ではなかろう、と除外できるみたいなことはあります。

 ミステリマニアの悪い点かもしれませんが、「イギリス製濾過器」の容疑者の一人は「明らかにこいつは犯人ではなかろう」という書き方をされています。もちろん、それが誰かは書きません。

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