ミステリを書くなら密室ものが手頃ではあるのですが

 タイトルの繰り返しで申し訳ありませんが、ミステリを書くなら密室ものが手頃です。なぜならば、俄然、謎の設定がわかりやすく、簡単だからです。

 カクヨムさんに関わるようになって知ったワードの一つに「テンプレ」があります。テンプレートの略で、ありがちな設定、定番といったところでしょうか。

 密室という設定はミステリーのテンプレートです。つまり、設定をゼロから捻り出す手間がいらないわけですね。

 カクヨムさんに参加されているかたは書き手のかたが大半でしょう。評論ジャンル、それもミステリーを取り上げた当連載を気にとめてくださるような(奇特な?)かたは、おそらくミステリー(かどうかはともかく)【カク】人だと思います。

 私自身も新人賞に投稿するような書き手でもあります。結果的はパッとしませんが、執筆歴だけは長いです。最初の頃は密室ものばかり書いていました。今にして思えば、それは楽だからです。

 謎そのものが魅力的であるかどうか、みたいなことに頭を働かせるのは三年以上たってからです。ワンアイデアで突破できることもある密室ものは、緻密な検証を要するアリバイものよりもはるかに労力が少ないです。

 ワンアイデアで破壊するアリバイや、緻密な構成の密室があると気付くのは、ずっと後。

 今回、取り上げている「イギリス製濾過器」も密室ものです。正直なところ、これはワンアイデアで一点突破のやつでしょう。

 これは鮮やかに決まれば強烈なインパクトを与えられるものの、謎解きのポイントを一つに絞られたら、簡単に解かれてしまう危険性があります。かといって、謎解きのポイントを散らすと、謎解きに不必要な描写も増えます。

 密室ものは手をつけやすい反面、面白く仕上げるにはかなりの技術や工夫が必要です。「イギリス製濾過器」にも工夫の跡がみられるのですが、ちょっと苦しいところがあるかな、と厳しく評価せざるをえないのです。

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