謎を美しく壊す芸術
しばらく、ネタばらしのある考察が続きました。今回はネタばらしなしです。
ミステリの書き手のかたならば、共感していただけるかと思いますが、トリックを思いついたから作品が書けるわけです。
まず、トリックが先にある。
犯人はそれでいいのですが、ミステリは探偵の物語でもあります。謎は提示されたら、解かれなければならない。謎が謎であり続けるのは、そうそう許されない残酷な世界です。
推理小説の読者は、魅力的な謎を欲するうえに、それが壊れることをも欲する。大変にわがままな生き物です。しかも、美しく破壊されることを望むのですから、強欲と表現してもいいでしょう。
書き手として頭を悩ますのは、実はこの謎をほどく課程をエレガントに仕上げることです。
A、「こんなトリックならできますよね」で済ませる。
B、Aに「このトリックを使えたのはあなたしかいない」を加えて犯人を特定する。
C、「これこれこういう推理から、こんなトリックが使われたはずです」をAの前に用意する。
Aだけでは本格ミステリにはなりにくいでしょう。少なくとも私はAだけでは本格ではないとする立場です。フーダニットとして成立するBまでやって本格だというのが、私の考えです。もっとも本格の見せ所なのは、Cのロジックの紡ぎ方だと考えます。
この「茶の葉」も、きっとトリックが先にあって書いたものではあると思いますが、きちんとCになっているのが素晴らしいです。
今でいう本格の概念もぼわっとしか存在していなくて、ジャンルとしてきちんと区分けされていなかった時代であったろうと推測できるぶん、ここまでやっているのは本当にすごい。
次回はまたネタばらしをして、具体的にどうやっているのかを考察していこうと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます