「茶の葉」の技法

 毎回、極力ネタばらしには配慮し、ミステリの肝の部分を明かしてでも踏み込んだ話をしたいときは、事前に注意喚起の一文をいれるなどしています。

 今回の記事ではネタばらしをしません。ですが、遠回しな表現をしたり、伏せ字を用いたりせざるをえないため、「なんじゃそりゃ」というかたもでてくるかと思います。できれば、「茶の葉」を読んでいただいてからのほうが、楽しめると思います。


 


※注※


 伏せ字ですが、次の部分で「茶の葉」のキーワードが出てきます。



 ご注意ください。





 身も蓋もないことを言えば、「茶の葉」という作品を知らなくても、扱われている「●の●●●」あるいは「●える●●」というアイデアは、多くのミステリファンが知っているでしょう。この連載を読んでいるようなかたは、きっとご存じのはず。









※伏せ字を含む箇所、終わり※



 一つのトリックやくわだてを成立させるための細部の工夫に注目すれば、名作ミステリはより味わえる。特に書き手でもある読み手にとっては、細かな技法はおおいに参考になるでしょう。

 一つ前に取り上げたクリスティは、悪巧みを成立させるための技巧の鬼みたいな人物で、作品を再読することで発見の多い作家です。

 クリスティの手法は、言い落とし、ダブルミーニング、パターンによる先入観の刷り込みなどです。そういったテクニックで「騙す」わけです。

 一方、「茶の葉」の場合は、メイントリックを絵空事にしないための「補う」工夫がされています。

 少し雑になりますが、クリスティ的な技法は「読者に向けて作者が仕掛ける大きな欺瞞」で、「茶の葉」の技法は「犯人が嫌疑を逃れるために仕掛ける小さな欺瞞」とも言えるでしょう。

 次回はネタばらしをして、「茶の葉」の工夫について考えてみたいと思います。

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