法廷劇としての魅力

 この「茶の葉」は、トリックの部分が取り上げられることが多い作品です。むしろ、トリックだけが語られて、「茶の葉」というタイトルが出てこない場合もあるほど。それほど、記憶に残りやすいネタが扱われています。「茶の葉」は読んだことはないけれど、その内容は知っているというかたもいるでしょう。

 過去の記事でも触れていますが、ある一つのポイントのインパクトが大きい作品ほど、それ以外の要素を語られにくいところがあります。これはもったいない。

 そこで今回は、あまり言及されない「茶の葉」の魅力について宣伝していこうと思います。

 まず、死んだケルスタン老人の娘ルースと、ルースの元婚約者であり、容疑者でもあるウィラトンとの関係を読みどころとして挙げましょう。この二人、ちょっと不思議な関係なのです。父親のケルスタンは娘の婚約破棄にしたウィラトンを忌み嫌っていますが、ルース自身はそれほど恨んではいない様子なのです。

 不勉強なもので、著者二人のことは、ほとんど知りません。戸川安宣さんによる巻末の「短編推理小説の流れ 3」によると、エドガー・ジェプスンは「冒険小説から怪奇ものまで幅広い作品を書いて」いるそうで、プロパーのミステリ作家ではないからこそ、微妙な関係性の二人という味付けなのかもしれません。

 深読みになるかもしれませんが、真相を知ると、ルースがウィラトンへの感情や、それを父親に打ち明けていないという設定は、ミステリとしても利いているようにも思えます。

 また、後半が法廷劇になるのもこの作品の語られにくい面白さの一つでしょう。ある人物のある言葉により、事件は急転直下、解決に向けて走り出します。このあたりのスピード感はすばらしい。短編ミステリならではの魅力でしょう。

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