新版 三巻

三密の世界レベルの傑作短編

 いよいよ第三巻です。巻頭はイーデン・フィルポッツの「三死人」。作者のフィルポッツについては「ズームドルフ事件」を取り上げた際に少し、触れました。乱歩がえらく気に入ったという長編『赤毛のレドメイン家』の作者です。

 タイトルの示すように死体が三つ出てきます。三人の死者の関係性はなにか、というのが大きなポイントであり、この作品の個性です。単純に人が死んで、さて犯人は誰でしょう、というだけではないところが面白いところ。

 動機、犯人、構図が三密状態の読み応えのある作品。三人の死者の人柄について丁寧に筆を運び、特に依頼人の双子の兄である人物については特に入念にページを費やしています。人間を描かないと事件が解けない、解決を提示されても納得しにくいという物語はただのパズルではなく、小説。まさしくこれは推理短編の傑作と言うべき一作です。

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