とはいえアリバイの作家
アリバイのイメージがあるけれどもクロフツは密室も書いていますよ、という流れでこう言うのもなんですが、クロフツという人はやはりアリバイが骨がらみなんだなぁ、と感じます。
それは密室の解き方がワンアイデアという奇矯な鍵一本を見つけるもの、という前回書いた点に限りません。
原稿を書くために集中して何度も「急行列車内の謎」を読み返していると、犯人がアリバイ工作めいたことをしていることに気づきました。
気づく、というのも大袈裟で、犯人自身が真相を告白するなかで、自らの口で語っているのです。
はっきりと「アリバイ」という四文字が登場するのは、「世界推理短編傑作集」シリーズで初めてのような気がします。
少なくとも「アリバイ」という用語、概念がしっかりとミステリーの世界にあったと言えるでしょう。
密室はポオがモルグ街で惨劇を描いたとき、いわばミステリー正史の起源から登場していました。ゆえに密室はミステリーの象徴のように扱われるのかもしれません。
一方、アリバイがミステリーの世界に根付くにはどれだけ時間がかかったかは気になるところです。
もっともある種の密室トリックが実はアリバイ工作であることを考えれば、アリバイの種はすでにモルグ街にまかれていたのかもしれません。
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