時代背景と宗教

 古い海外作品を読む際に難しいな、と思うのは現代の日本の読者からみると、時代背景や宗教観がわかりにくいときがあるからです。

「ズームドルフ事件」の被害者は酒をつくっていることで「悪」として描かれるのですが、これ、なかなかピンときません。

 調べてみると「ズームドルフ事件」の発表された1914年というのは禁酒法の前。とはいえ、禁酒法真っ只中でもなく、酒が悪徳というのが時代的なものなのか、作者のポースト自身の倫理観なのか、探偵役のアンクル・アブナーのキャラクターづけ、シリーズの色づけなのか、それらすべてが渾然一体となったものなのかがわからない。

 途中で出てくる旧約聖書士師記三章二四節からの引用も意味がありそうなのですが、私にはわからない。

 宗教の話はデリケートなだけでなく、わりと動機にかかわることもあるので悩ましいです。

 これは反対に日本の作品を海外に紹介するときにも生じる問題で、たとえば名作「高天原の犯罪」は海外の読者には伝わりにくいと思うのです。

 その認識の隙間をつくように、幻影城出身作家のある名作も生まれるのですが。

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