有名なトリック

 今回から「ギルバート・マレル卿の絵」です。

 走る列車の真ん中の貨車だけ消えるという謎が実にそそる、魅力的な作品。タイトルは知らなくても、この謎と、トリックは知っているというかたも多いのではないでしょうか。

 かくいう私もその一人でした。今回、再読にもかかわらず新鮮に読めたのは、旧版(リニューアルされて「世界推理短編傑作選」になる前の「世界短編傑作選」シリーズのほう)で読んだときは、「あぁ、これ、例のあれじゃないか、ネタ知ってるよ」と適当に飛ばし読みをしたにちがいありません。なんてもったいない。

 私の子どもの頃は、名作のトリック部分だけを引っこ抜いたクイズ本のたぐいが割と流通していて、一時期、目を通していました。たぶん、その手の本でこの列車消失のトリックを知ったのでしょう。

 絵画がどうの、という部分も面白いのですが、やはりこの作品の肝は貨車消失。

 ミステリ好きは図も好きなので、図がついていれば、なおよかったのですが。

 ただし、図はうっかりパラパラとページをめくると見えてしまうかもしれないという大きなリスクを抱えているので、扱いには慎重にならざるをえません。ミステリ好きは間違えても、うっかりパラパラしないようにしましょう。


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