歌う白骨

 『ソーンダイク博士の事件簿Ⅰ』が見つかったので予定していた原稿は明日以降にして、「歌う白骨」の話をします。

 倒叙ものの元祖とされるだけに犯人と探偵の対決の魅力は後世の「刑事コロンボ」ほど全面的に押し出されてはいない印象。「オスカー・ブロズキー事件」よりは 対決の感じがあります。その点、「オスカー・ブロズキー事件」は特殊なのかもしれません。

 コロンボに見られる捜査サイドが犯人に仕掛ける「逆トリック」がないのは元祖ですから当たり前と言えば当たり前なのですが、倒叙形式が発展するにつれ、逆トリックのような趣向が生まれてきたことにハッとさせられます。

 状況証拠はこいつが犯人だと示しているのに決定的な証拠がないレベルまで捜査側が追い詰められるというシチュエーションも「歌う白骨」にはなく、この極限状況からの大逆転、詰め手の見事さみたいなものもだんだんと生まれてきたもののよう。

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