オスカー・ブロズキー事件
今回からオースチン・フリーマンの「オスカー・ブロズキー事件」を取り上げます。
ミステリの歴史を勉強しようと、その手の本を調べると、必ずといってよいほど名前の出てくる作品。もちろん、名前も知っていて、以前に旧版(リニューアルされて「世界推理短編傑作選」になる前の「世界短編傑作選」シリーズのほう)で読んでいるはずですが、かなり内容を忘れていました。そのため、大変、面白く読みました。
シンプルにいいです。オススメしたい。自分でアンソロジーを編むとしても、ぜひ入れたい一作。
物語の構成は、これまで紹介してきた作品とは違います。まず「1 犯罪の過程」と題されたパートでサイラス・ヒックラーという人物の行動が描かれます。そして後半の「2 推理の過程(医学博士クリストファ・ジャービス記)」のパートで探偵役の推理が描かれるのです。
とにかく、書き込みが丁寧。だからこそ、後出し的に推理が出されてもいちいち的中するのですが、これは後出しではなく、前もって伏線として情報が提示されていると言い換えてもいいでしょう。空白を埋める推理のジャンプの面白さではなく、知識の鎖というか、データと犯人の行動の距離が短いため、あまり推理のカタルシスはない(というか推理にすら思えない)のですが、きちんと書かれています。科学小説ですね。どこかジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズ第一作『ボーン・コレクター』を読んだときのような面白さを感じました。とにかくデータの量が多くて、緻密。
とりわけ、ビスケットの扱い方がうまいです。あとは帽子が印象的でしょうか。ミステリの証拠としてだけでなく、物語を盛り上げる小道具として帽子は実にうまい。
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