新版 二巻

放心家組合は巻頭のほうが

 ずいぶんと間か空いてしまいました。一応、前回で旧版の一巻の最後まで取り上げました。仕切り直しの今回は旧版の最後に収録され、新版では二巻のオープニングを飾る「放心家組合」について、もう少し語ります。

 この作品は、巻末にあるよりは巻頭にあるほうが面白さがより活きるのではないか、と感じました。ポイントは二つ。まず、「放心家組合」という作品がストレートな推理ものではなく、「奇妙な味」と呼ばれる変化球であること。第二の点はネタばらしをして触れます。




注 以下、「放心家組合」の結末について触れます。ガッチリ明かします。



 この作品の最大の面白さは終盤のツイストです。探偵役が悪党の計略を見抜いたと思ってから、「実は探偵は間違えた推理をしているのではないか」と読者までもが丸め込まれそうになり、フワフワしているうちに犯罪者に出し抜かれて証拠隠滅させられ、最後には悪役がニヤニヤするというオチです。

 現代のスタンダードである「快刀乱麻の名推理で探偵が悪の計画犯罪を打ち砕く」ではなく、「犯罪をネタに周囲の人間を描く」という推理小説のフォーマットがきっちり固まる前のぐちゃぐちゃした段階ならではの作品。

 終盤に捻りがある作品は、残りページがわからない形で楽しむほうが面白いです。巻頭に持ってきたほうがよい、というのはこの点にも関係しています。

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