バランス型か個性か

 第一集を読み直しているときに浮かんだ疑問があります。それはこの傑作選がジャンルの幅や歴史などをふまえたうえでバランスよく作品を集めたものなのか、乱歩が自身の作家性のようなものを投影したものなのか、どちらなのだろう、というものです。

 以前にも触れましたが、乱歩は選出にあたり、すでにクイーンなどが試みていた世界のミステリー傑作ランキングのようなものをベースとしています。ならば、バランス型になるはずなのでしょうが、どうにも落ち着かない気分になるのです。

 どれだけバランスをとろうとしても、なにかを選ぶという作業には、選ぶ人間の個性が溶け出します。それをふまえたうえでも、第一集の作品には乱歩が扱ったモチーフが目立つように感じるのです。



注 以下、「人を呪わば」「放心家組合」「屋根裏の散歩者」「二銭銅貨」の内容に触れます。



 たとえば「人を呪わば」は「屋根裏の散歩者」の水平を垂直に角度を変えたものと捉えることができます。「放心家組合」の終盤の展開は「二銭銅貨」に通じます。

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