花と鏡
アイヴィさん
プロローグ
「結局さ、なんにもない空っぽなんだよ。そういうの何ていうんだっけ?」
水に濡れて、ビニールのような光沢を発した
いかにも面倒くさそうに、濡れたタオルを体に巻き付けながら、たった一個の白熱灯で照らされたリビングに戻って来た
柔らかな影の濃淡を描く鎖骨の
初めて訪れた、見知らぬものが
「自分の空っぽに気づいてからが、本当に生きるってことじゃない?」
太陽に照り返された運動場の砂は目を細めてしまうほどに
誰もいない運動場の静けさは、長らく放置されたままの建造物のような、もの寂しさと孤独を感じさせる。まるで誰からの認識も意に介さないように、無遠慮に、無神経に存在していた。周囲から完全に孤立して、日常の外に立つもの独特の雰囲気を眺めるのが
目に砂の白さが焼き付いて視界が薄ぼんやりとしてきた時、運動場の中央で
眩んだ目を教室の中へ向けると、
教室内に虚しく響く教師の弁舌鮮やかな口上を聴きながら運動場に再び目をやると、垂直に落とされた校舎の影も少しだけ形を歪め始めていた。
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