第9話 冬のチェック

 浅井さんの恋人のSNSをチェックしています。こっそり、じっくりと。

 浅井さんの前の恋人を最後に見た日づけ付近まで遡ります。

 お友達とランチ、のような投稿や誰かと行ったと思われる公園の花の写真でした。

 花の写真を投稿した日は、浅井さんはライブの次の日で午後まで寝ていた日です。

 恐らく前の恋人と新しい恋人の期間が被っているということはないと思いました。

 浅井さんは、そういったところは誠実です。


 浅井さんのお誕生日の投稿をチェックしました。

 お祝いと思われるケーキの写真がアップされていました。

 この日、私も浅井さんのお誕生日をお祝いしました。家で一人でお祝いしました。

 浅井さんのお誕生日はめでたいですが、好きな人の恋人のSNSをこっそりチェックしている行為に少し泣きたくなりました。


 浅井さんが恋人のアパートに泊まる日を狙い、私も彼のアパートへ泊まりました。

 近くの場所で浅井さんが恋人を抱いているのだと想像しました。

 同じ頃、私も彼と交わっているのは妙な高揚感でした。

 私の頭の中は、浅井さんでいっぱいでした。

 目の前にいる男が浅井さんだったらいいのにと、ずっと思っていました。


 次の日は早起きをして、浅井さんの恋人のアパートをチェックしようと思います。

 泊まった日の夜中、私はトイレに起きたので、浅井さんの恋人のアパートを見ました。

 雪明かりで、よく見えます。

 屋根に黒いものが見えます。カラスでしょうか?

 黒いものは飛び降りました。また?

 次の日、近所で変わったことはありませんでした。

 私は朝食を作りました。

 いつか浅井さんと一緒の朝を迎えた日のための練習です。


「美味しい」

 彼は一口目に、笑顔で言いました。嘘っぽいです。

 浅井さんならきっと、無表情で食べている最中お味噌汁を飲んだ直後に「美味いな……」と言うでしょう。


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