第8話 新しい恋人

 しばらく経った頃、浅井さんは新しい恋人を連れてきました。

 私の知らないうちに新しい恋人? と思いました。

 観察を強化しなくてはと、思いました。

 先日の私への口説きは、もしかして本気だったのでしょうか。

 私は間違えたのでしょうか。私は後悔をしているのでしょうか。

 それよりも浅井さんは、前の恋人とは別れたのでしょうか。

 あの人のお腹の膨らみは、私の見間違いだったのでしょうか。それとも単にぽっこりお腹だったのでしょうか。


 情報を入手しました。手段は秘密です。

 浅井さんは、前の恋人とは別れたそうです。理由は、子どもを認知しないからだそうです。やっぱり女性はご懐妊でした。

 女性の方は産むと言い、浅井さんは認知はしないと言ったそうです。

 浅井さんは、養育費を払うそうです。


 私はホッとしました。

 新しい恋人からしたら浅井さんには他の女性との子どもがいるし。

 前の恋人にしたら、浅井さんの子どもはいるけれど浅井さんと一緒になることはないからです。

 新しい恋人も前の恋人も、浅井さんの恋人です。恋人だった人です。

 私は浅井さんとはなんの関係もありません。

 他人のことで一喜いっき一憂いちゆうしている自分が嬉しいのか哀しいのか解りません。

 涙が一粒、こぼれました。

 私はいつだって浅井さんを見ているのに。


 浅井さんの新しい恋人のアパートの近くに、浅井さんの友達が住んでいることが発覚しました。

 私はホステスのバイトでつちかった技量を発揮し、その友達とつきあうことに成功しました。


 浅井さんの髪型はいつも少し、乱れています。わざとなのか無精ぶしょうなのかは解りません。

 浅井さんは恋人のアパートから出る時、髪型が整っています。

 多分浅井さんの恋人が、浅井さんの髪型を整えているのでしょう。

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