第7話 ラッキーカラー

 週に一度のホステスのバイトのために、経済新聞を読むことになりました。

 ニュース番組も欠かさず見ることになりました。

 お客様との話題のためです。

 しかしこれでは浅井さんを見る時間が少なくなってしまいます。

 浅井さんを見るほうが大事です。そのために引っ越してきました。

 家賃のために浅井さんを見る時間が減るなんて本末転倒ほんまつてんとうです。

 ホステスのバイトを、月に一度にしました。認められました。


 バイト先のお客様に聞きました。私のラッキーカラーはピンクだそうです。

 恋の色です。早速ローズヒップのハーブティーを飲みました。

 ちょっと濃いピンク色をしています。血の色にしてはピンクです。

 ハーブティを飲んだせいでしょうか。夜中にトイレに起きました。

 せっかくなので、カーテンの隙間すきまから浅井さんの家を見ました。

 浅井さんの家の向かいの屋根に黒いものが見えます。カラスでしょうか?

 今夜は満月なので、明るいのです。黒いものが、飛び降りました。

 浅井さんの姿は見えなく、眠いのですぐベッドに戻りました。さっきの黒いもの、人ではないよね? そんなことを思いながらうとうとしていました。


 翌日、近所に変わったことはありませんでした。

 カラスだったのでしょう。それか、疲れていたのでしょう。


    〇


 ある日、浅井さんの恋人の下腹部かふくぶが膨らんでいるように見えました。

 浅井さんの恋人は、体の線がはっきり見える丈の短いワンピースを着ていました。

 横から見たら、お腹が膨らんで見えました。

 ぽっこりお腹でしょうか、それとも……。


 その次のライブから、浅井さんの恋人はライブハウスに現れません。

 やはりご懐妊かいにんだったのでしょうか。

 浅井さんは、結婚したのでしょうか。

 私はお守りを、ぎゅっと握りました。


 ある日、酔っ払った浅井さんが、私を口説いてきました。

 戯言たわごとか本気か区別がつきません。

 恐らく浅井さんはこうやって、少しのチャンスを逃さずに恋人を掴んできたのでしょう。

 もし戯言だったら恥ずかしいのと、「なんだか違う」と思い、私ははぐらかしました。

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