第3話 浅井さんの家

 浅井さんの家に行きたいので、浅井さんの後輩に近づきました。

 浅井さんの後輩で「彼女が欲しい」とよく言っている人を狙いました。

 彼はお酒を飲んでいたので「このあと二人で飲みに行こう」と誘いました。

 その日私は鎖骨さこつが見える服を着ていました。私は鎖骨が綺麗だとよく言われます。

 彼とはその日のうちにつきあうことになりました。

「俺にも春が来た」

 彼は言っていました。確かに季節は春になります。



 彼とカップルとして、浅井さんの家に行きました。

 浅井さんの部屋へ通されました。

 浅井さんの恋人もいらっしゃいました。

 浅井さんの部屋は、キーボード以外の楽器も並んでいます。

 彼もバンドをやっているので、浅井さんと曲作りの話などをしていました。

 その時私は、浅井さんの恋人と他愛もない話をしていました。

 心の底からどうでもいい、中味のない話です。

 私は愉しんでいる笑顔を作りました。女優かと思うほどです。

 浅井さんの部屋に来るために、好きでもない男とつきあいました。

 笑顔なんて楽勝です。


 浅井さんのコーヒーカップの外側に、コーヒーのしみがついていました。

 内側しか洗っていないのでしょう。浅井さんの恋人はズボラだと思いました。

 変な優越感を持ちました。はしたないです。

 しかしよく考えたら、浅井さんはご実家でご両親と暮らしているのです。

 コーヒーカップを洗っているのは恐らく浅井さんのご家族でしょう。

 浅井さんのご家族の洗い残しです。勘違いをしてしまいました。

 申し訳なく思い、少し落ち込んでいます。


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