第2話 三年ほど経ちました

 三年ほど経ちました。

 私は変わらずライブハウスに行っています。

 浅井さんは自分のバンドが出演しない時は、恋人と一緒にいることが多いです。

 浅井さんには色気があります。


 浅井さんの恋人は、気づいたら変わっています。

 新しい恋人を連れてきたら、前の恋人はライブハウスには現れません。

 浅井さんの歴代の恋人を、私は見ていました。

 浅井さんの好みは、豊満なボディで目が切れ長の女性です。

 私はやせていて童顔なので正反対です。


 浅井さんはSNSで千里ちさとさんという女性の投稿によく反応しています。

 私の投稿には一切リアクションをしてくれません。

 千里さんは皆に嫌われています。どこが良いのでしょう。

 そう、千里さんは確かに目が切れ長で豊満なボディをしています。

 千里さんは年上の男性に甘えます。自分より年下の人には、男女関係なく横柄おうへいな態度をとります。


「自分をしたってくれるやつは可愛いよ」


 東京にいた時、会社の先輩が言っていたのを思い出しました。

 そうなんですね?

 浅井さんの周りには人が絶えません。

 特に女性には少し甘いので、若い子も浅井さんにはタメぐちで接します。

 いつも愉しそうです。

 けれども私は他の女性のようにはふるまいません。

 浅井さんが私に興味を持ったのは、他の女性と違うたたずまいが気になったからだと解るからです。

 言い換えるとそれ以外私には「他と違うもの」がないのです。

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