第95話 世界元帥級軍事連絡会議5
箱舟の打ち上げを受けて元より予定されていた世界元帥級会議が開かれた。
今回定期連絡会議ではなく緊急会議の為、スイスが議長代理カールが務めた。
「では今回の箱舟について報告を」
アレックスJr.が立ち上がる。
「正直、人型の襲撃が本当にあるとはな・・・。破壊されたのがアメリカが発射した5機の内、ダミーの1機で済んだのは幸いだ。しかし、襲撃された事で得た情報が3つ。まず1つ。現在確認されている人型は7匹。今回7機以上打ち上げることで、まだ確認されていない固体が姿を現す可能性があったのだが・・・それは無かった。つまり人型は現在この地球に7匹しか存在しない可能性が高い」
「そして2つめ。今回5機の内それぞれの搭乗人数の情報を軍内、一般向けとそれぞれ違った情報を流し、さらに各シャトルに搭乗する人数の情報を軍内部の大まかな階級毎に、違った人数をあえて前日に伝た。一番多くの人が乗っているシャトルを狙うであろう事から、相手がどこから情報を手に入れているか把握する材料となる。軍内部に裏切り者がいればある程度絞れる事が出来るはずだ。まぁ・・・今回はどの国も一般に開示した情報で、最も多い人数の乗ったシャトルを攻撃してきた事から、相手の情報収集元はTVもしくは一般人の恐喝という可能性が大きい」
「そして3つめ。人型は一部再生能力がある事が確認された。前回我が軍が落とした人型識別番号№1。その腕と羽のうち羽のみが再生していた。しかし、腕は再生して無かったためダメージの蓄積が可能という事になる。アメリカからの報告は以上だ」
「日本からも2つ。人型と交戦し逃げられてはしまったが、新しい情報があった。それは人型は言語を習得しておるという事じゃ。戦闘の際接触した戦闘員から日本語にて威嚇があった。恐らく人型にも担当地域がありその国の言語を習得しておると見られる。先ほどのアレックスJr.が言った通り情報収集もTVなどを活用しておるのでろう。2つ目は今回の戦闘で人型の龍麟鉱を入手した」
誠は手の平サイズの龍麟鉱を見せる。
「人型の龍麟鉱じゃ。調べた所、この龍鱗鉱はクラス5よりも更に高性能じゃ」
「クラス5より!? ならどうやって戦えと!?」
各代表から不安の声が上がる。
「まぁまぁ落ち着くんじゃ。硬いとはいってもクラス4の弾丸でも効かん事は無い。そうじゃのう・・・この人型の龍麟鉱を少しずつ分け与えるので各国研究を行ってくれ」
アレックスJr.が立ち上がる。
「何を馬鹿な事を・・・それの価値を知っているだろう!? みすみす手放すなど・・・」
「アレックスJr.・・・世界共通の課題には世界で協力せねばならん。アレックスJr.お主も以前の戦闘で人型の素材を持っておるはずじゃろう? それを分け与えてはどうじゃ?」
「断る! なぜ国力に直結するようなことをせねばならん。なぜ日本は・・・いやなぜお前はそうも余計な事をする。いくらトップ5に入る国力を持つ国とはいえ他国に施してばかりいる余裕もないだろう」
「ほっほっほ。この戦いに勝たねば大国だろうが小国だろうが皆同じく滅びる。今やるべき事は生き残った時の事では無く、協力して生き残る事じゃろうて」
アレックスJr.は反論もせず腕を組んで座る。
この後、色々な議論が交され予言の日に向けて最後にあるであろう世界元帥級会議は終了した。
会議が終了した後、アレックスJr.は携帯電話を手に取り、電話をかけた。
「電話とは珍しいな息子よ」
電話の相手は父親であるアレックスだった。
「親父・・・親父は昔、俺が軍のトップになった時言ったよな。お前が世界を率いるつもりなら超えなければならない壁がいると。中国の(レン) ロシアの(イワン) イギリスの(アルバート)インドの(アールシュ)そして日本の(誠)。この内現在現役は日本の誠のみ。他の人物は親父の言うとおり尊敬に値する。が、誠。あいつだけは分からん。親父は何故誠の名前を挙げたんだ? 今回も人型の龍麟鉱を他国に配ると言い出したんだぞ!?」
「息子よ。それが誠だ。何も考えていないようで結果が出た時、必ずその行動が生きている。それが分かった時お前は世界のナンバーワンになれる。お前なら必ず出来る。何故ならお前は私の息子だからだ」
「親父・・・そうか、助言感謝する」
アレックスJr.は電話を切る。
「貴方は今のままでも十分偉大です。今は細かい事を考えている暇は無いはずです」
「そうだな、リリィ。もう時間が無い。考えるのは全てが終わってからだ」
「了解」
校長室にて何やら書類に目を通しながら頭を抱える誠。
そこへ咲がお茶を運んでくる。
「おいジジィあんまり考え事ばっかりやってるとハゲっぞ。まぁハゲても俺は愛せるがな」
「おお。すまんのう。咲」
「あと、ほらよ手紙だ。ジジィにとっちゃ頭の髪よか嬉しい紙かもな。俺からしたらジジィの髪以下だが」
誠は苦笑しその中の手紙を取り出す。
「ほっほっほ。ついにきおったか!」
「細けぇ手続きは俺に任せろ」
「すまんのう」
後日、守達は校長室に呼び出された。
「皆忙しい所すまんのう。今回の作戦でお主達の上官に配属された者を紹介する」
「上官? 咲さんじゃ無いんですか?」
「馬鹿か? 俺は最前線に立つ。ガキの世話してる暇は無ぇんだよ。いいからさっさと入って来い」
校長室の応接室から軍服に身を包んだ女性が現れた。
その胸には少尉の階級章が輝く。しかし、それ以上に美しい髪をなびかせ皆の前に立つ。
「キャロル・・・!? お前・・・帰って来たのか!?」
キャロルは顔をしかめ、腰の銃を守に向け、胸の階級章をトントンと二回叩く。
「け・い・ご。ですわよ」
「キャロルちゃんっ!」
千里が駆け寄りキャロルを抱きしめる。
「ちょっと千里!? 何しますの!?」
「お帰り・・・! もう帰ってきてくれないのかと・・・」
千里は震える声で涙を流しながらキャロルを抱きしめ続けた。
「ああっ! もう、鬱陶しいですわね! せっかく今日おろした軍服がぐちゃぐちゃじゃありませんの!」
キャロルは千里を引き剥がす。
「京都に行って少しは仏の心を学んで大人しくなったかと思えば、相変わらずのキャロルだな」
「蹴られたいですの? 大地」
大地は一歩後ずさる。
「お帰りキャロル」
「沙耶。そういえば今度借りていた本をお返し致しますわ。本当に良い本でした感謝致しますわ」
「いい。キャロルにあげる。私は全部覚えてるし、本当は帰って来なかった時会いに行く口実に使うつもりだった」
「積もる話もあるじゃろうが、急ぎ空町の警備へ戻ってくれると助かるぞい」
一同は校長室を後にし移動を始める。
「お帰りキャロル。本当に戻ってこないかと思って心配してたんだぞ」
「うるさいですわね・・・わたくしが約束を破る訳ありませんわ。大体・・・守が考え無しにドラゴントレーナー補佐官なんて資格を取るから、私が少尉試験まで受ける派目になりましたのよ!?」
「何で俺・・・ああっ!? 『ドラゴントレーナー補佐官の所属する隊は補佐官死亡の際、抑止力として少尉階級以上の隊員を1人以上有する事。もしくは少尉階級以上の監視下において戦闘を行う』っていうあれか!?」
「ふんっ。守にしてはよく覚えてましたわね。さぞかし指導がよろしかったのでしょう」
「いや、お前がどこの階級まで狙ってるとか言われなきゃわかんねぇし!」
「うるさいですわ! やっぱり貴方だけは敬語を使ってくださいまし!」
「何でだよ!?」
キャロルは無視し歩く速度を上げた。
担当地域の空町に移動した一同は、あるビルの屋上にて昼食の為に集まっていた。
「んまぁ~! 可愛いお・ん・な・の・こ」
有沈が腰をクネクネとさせながらキャロルの隅々を舐め回すように見る。
「大久保 キャロルと申します。よろしくお願い致しますわ」
キャロルは丁寧に頭を下げる。
「そういえば、私の居ない間にメンバーが増えたようですが・・・まぁエルダは昨日会いましたので、他は・・・本田 美神先輩と源 朝さん。ですわよね?」
「おーう! 私が美神だ。皆から聞いてるぞ。よろしくなキャロル!」
「よろしくお願い致しますわ」
「因みに私の階級は曹長だからキャロルの下だな。よろしくな上官殿」
キャロルと美神は握手を交す。
「私は朝ってんだ。武器は弓だけど大した威力は出せねぇから基本はサポート役だ」
「存じておりますわ。在学中、貴方の弓の腕には一目置いておりました。魔力が並なのは本当に惜しいですわね・・・。ですがサポートも大事な仕事ですので期待しておりますわ」
皆円状に座って各々の弁当箱を広げ、食べ始める。
「有沈さんの弁当は可愛いですわね」
有沈の弁当は二段になっていおり、上の段には小さく可愛いキャラクターを模したおかずが、下の段には白飯らしきものが敷き詰められていた。
「んも~ん! キャロルちゃんの方が可愛いわよんっ」
「・・・しかし、そんな量で足りますの?」
「大丈夫っ。この下の段は全部プ・ロ・テ・イ・ン。 キャロルちゃんも食べる?」
「いえ・・・遠慮しておきますわ・・・」
キャロルは守の弁当を見ると、その中から素早くから揚げをつまみ食べる。
「おいっ!? 俺の・・・」
「何か?」
キャロルは守を睨む。
「ッツ・・・!」
「もう。駄目だよキャロルちゃん・・・はい、守君。私の卵焼きあげる。好きだったよね?」
千里は守の弁当箱に自分の卵焼きを乗せる。
「ありがとな千里~!・・・っておいっ!」
その卵焼きもすぐさまキャロルに奪われ、口に収まる。
「千里の卵焼きは守には勿体無いですわ」
「てんめ~・・・!」
その様子を見ていた朝は小さくため息をつく。
「ガキかよあいつら・・・」
「おい! お前ら食事中に遊ぶな!」
見かねた美神が弁当を置き立ち上がる。
「力士にとって食事は稽古と同じなんだぞ! そんな食べ方をしていては何時まで経っても体が大きくならんぞ!」
皆はその立ち姿を凝視する。
「なっ何だお前ら!? 私がチビって言いたいのか!? 馬鹿にしやがって~・・・!」
「いえっ・・・そういう訳じゃ・・・」
その時、けたたましい音のサイレンが町に鳴り響き、赤いランプが一斉に光を放つ。
「何だ・・・どうした!? まさか・・・」
町中に設置されたスピーカーから放送が流れる。
『各地区ゲートよりドラゴン多数出現。現場の指揮官に従い行動せよ。繰り返す・・・』
ゲートからドラゴンの頭から徐々に姿を現し始めた。
「おいおい!?」
有沈とキャロルはインカムに耳を当て黙っている。
「みんな~最悪よ~ん! 相手はクラス4甲龍型。それはともかく同時出現してるみたいだから援軍は期待しないでって言ってるわ~ん。つまり、孤・立・無・援よんっ」
「有沈さんのいう通り、このドラゴンはわたくし達だけで対処しなければなりませんわ」
「マジかよ・・・有沈さん、どうしたらいいですか!?」
「私は貴方達の力、全てを把握してないから指揮はチームリーダーが取ってん」
皆一様にキャロルの方を向く。
「ちょっと待って下さいまし。わたくしも今の貴方方の力は把握しておりませんわ。ここは大地に任せますわ」
「俺っ!?」
「ええ。わたくしが居ない間どれほど成長したのか見せて下さいまし! 分かったらさっさと指示を出しなさい!」
キャロルは大地を睨む。
大地は自分を落ち着かせるように大きく息を吸う、そして
「守は上空から目、沙耶は正面から口、剣とエルダは前足、美神先輩と有沈さんは近距離、朝は中距離でサポートをお願いします!」
『了解!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます