第94話 人型交戦
8月15日急遽国会議員が召集された。主な議題は明日発射される箱舟や、神の書による終焉の日が迫る中、対策の進行状況などを把握する為である。もちろん神代元帥もこれに招集された。
しかし、開始の時刻になってもかなり空席が目立っており、総数の半分にも満たない状態だった。
「少ないのう・・・」
「皆どうせ死ぬからやる気ねぇんだろ。黒内の奴やその取り巻きも姿が見えねぇ」
咲が腕を組む。
「いや、どうやら理由は明日の打ち上げじゃろう。噂ではかなりの議員が箱舟に選ばれたようじゃ。まぁ非公開じゃから本当かどうかはわからぬが」
「んな訳ねぇだろ。日本は無作為で選んでる筈だぞ。・・・まさか」
「そういう事じゃろう」
「ケッ。相変わらず腐ってんな」
「さて、始まるようじゃ」
まずは議員から神代元帥相手に質疑応答から始まった。
「神代元帥に質問致します。現在東京周辺に多くの戦力を割いているようですが、その根拠をお尋ねしたい」
「京都大災厄の際、襲撃場所がその国の首都だった事を踏まえ、今回も首都といわれる東京及び京都に集中して軍を配備してある。京都に関しては連合軍が警備を担当する事もあって、東京ほどの警備を当てていないのが現状じゃ」
「それでは、地方は見捨てるというお考えで?」
「それは違うぞ
「なら地方は爆撃で無茶苦茶にして良いと?」
「ちゃんと人員は配備しておる」
「具体的に何人ほど? データを開示して下さい」
「軍事機密じゃ」
「この後に及んで軍事機密とは、ふざけないで下さい!」
議員は声を荒げる。
会場は他の議員の野次や罵声で包まれた。
議長がそれを静め、次の議題に移る。
桐浦議員から続けて質問が上がる。
「明日、世界同時。日本からは種子島と内之浦から箱舟の打ち上げの予定ですが、警察ではなく軍が警備をするということですが、なぜその必要があるのですか?」
「不満を持った一般市民が暴徒化する可能性がある。軍が警備しておるとなると手出ししにくいし鎮圧も早い」
その後質問は続き、常に神代元帥が責められ続け議会は終了した。
「おい、ジジィ。いい加減、あいつら殺していいだろ?」
「皆、不安で苛立っておる。理不尽を誰かのせいにしたいだけじゃ。それよりも栄斗に電話を繋いでくれ」
「おう。任せろ」
咲は携帯を取り出し栄斗にかける。
「おう。ジジィが話があるってよ」
「栄斗。明日はしかと頼んだぞ」
『本当にやるんですか・・・。わかりましたよ。あなたの事ですから何か考えがあるんでしょう?』
「すまんな」
それだけ言うとすぐに電話を切ってしまった。
翌日、種子島には多くの人が詰め掛けた。
その殆どは搭乗する人では無く、手に箱舟反対と書かれたプラカードを持った、デモ行為するために集まったこの作戦に不満を持つ、一般市民だった。警備をしている軍に止められながらも、罵声や何かを投げたりする者もいた。
そんな中、黒いカーテンで中が見えなくしてあるバスが次々と、スペースシャトルの発車台に直接繋がった黒いトンネル状の中へと入っ行く。
物々しい警備の中、誠と栄斗がシャトルの近くで何やら話し込んでいた。
「準備は万全かの?」
「一応やるだけの事は準備しました。しかし、予想が外れた場合責任を追及されるのは私の方なんですからね・・・とにかく、そろそろ発射です。離れて下さい」
そしてついにカウントダウンが始まった。世界各国同時に発射されるこの箱舟は世界同時中継され、全世界の注目が集まっていた。
「それでは発射致します。3・2・1・発射!」
アナウンスと共に画面に映った世界各国同時にシャトルが同時に空へと飛び上がり、見えなくなってしまった。が、日本のシャトルだけは発射されずその場に残ったままだった。その場に居たほぼ全員が動かないシャトルを見てざわついている。
次の瞬間、先に飛び立った各国のシャトルが次々と爆発し、その破片が地上へ飛来する映像が映し出された。それを見た日本と同じく各国の集まったデモ隊からは悲鳴、そしてそれを上回る歓声が上がった。
アメリカではアレックスJr.は腕を組んだまま破片の落ちて来る上空を見上げている。
「リリィ」
隣で仰向けに寝転び、銃身を脚の指で挟み上空にその長いスナイパーライフルを構えた女性が答える。
「居ました。やはり人型。人型識別番号№1。前回我々が片腕片翼を奪いながらも逃した固体で間違いありません。しかし、羽の方が再生しかかっています。まだ元の大きさには戻っていませんが飛行には問題ないのかと」
「トカゲの尻尾のようなものか。少し遠いな・・・いけるか?」
「命令とあらば」
リリィは揺れる対象に狙いを定めて、一気に引き金を引く。
地面が揺れるほどの反動と同時に弾が人型に向かって一直線に放たれる。
人型は瞬時にそれに気がつくが、回避行動が間に合わず羽に弾が貫通した。それに腹を立てたのか、弾が飛んできた方向に向かって特大の火球を放つ。
「外したのか?」
「ちゃんと当たりました。カス当たりですが、ヒットはヒットです。それよりお願いします。あれは無理です」
「ああ、コールを頼む」
リリは一歩下がり銃を置き、小さく手拍子を始めた。
「USA。 USA」
アレックスJr.は一歩前に出て、大きく息を吸い込み一気に気合を入れると同時に、一気に筋肉が肥大し服がはじけ飛び、そのまま地面を蹴り火球を殴り消滅させた。
「全軍・・・掛かれ!」
一方、日本では誠が空を睨んでいた。そこへ小春から通信が入る。
「上空! 人型目視しました!」
「よし。今じゃ! 発進せよ!」
それを合図に戦闘機が滑走路から次々と飛び立った。
「戦闘機の部隊は一撃離脱を小春・
上空では西中将と小春がそれぞれクラス3の翼龍型に乗って、人型の下に待機していた。
人型もこちらに気がついてはいるものの、特に動く様子は無かった。しかし、戦闘機が近づいてくるのが分かると向きを変え、一気に加速を始めた。
「追うぞ小春。遅れるな」
「今日摑まえられれば私が調教してもいいんですよね!?」
「捕まえられればな」
「うふふ・・・」
小春は涎を拭きながらドラゴンを加速させ人型を追った。
人型の速度は早く、クラス3翼龍型ドラゴンをもってしても、油断すればおいて行かれてしまいそうになる。
しかし、それでも戦闘機よりは遅く、追いついた戦闘機は次々にミサイルを発射する。人型は避けようと方向を変えるが、誘導式ミサイルは追尾しながらどんどん距離を詰めてゆく。
振り切れないと悟った人型は急遽ミサイルの方を向き、火球でミサイルを誘爆させた。すぐさま後続機からミサイルが飛来しそろもかろうじて打ち落とす。次々と飛んでくるミサイルに苛立ち始めた人型は、今度は向かってくる戦闘機へと向かって勢い良く突っ込み始める。
今西中将に取り付けられたカメラによって、送られてくる映像を見た誠が叫ぶ。
「人型に最も近い戦闘機は対象にミサイルを発射後、機関銃に切り替え発信弾を放て! 着弾の是非に関わらず、一定距離まで人型が接近したならば緊急脱出を行え! その他戦闘機はミサイルと機関銃にて距離を取りつつ追跡せよ! 小春は即座にパイロットを救出へ向かうんじゃ!」
人型はそのミサイルを火球で打ち落とすも、すぐさま機関銃による弾丸の嵐が迫り来る。
即座に羽をしまい、空気抵抗、非断面積を最小限にしつつ、自らを鱗で覆い一発の弾丸のように迫り来る。
パイロットが指示通り緊急脱出を行った次の瞬間、乗っていた戦闘機は火球により爆散した。
人型は即座に脱出したパイロットに狙いを定める。が、それより先に小春のドラゴンがパイロットを回収していた。人型は小春に向かって火球を放つも、それを小春のドラゴンが同じく火球で打ち落とす。
「ナイスよ! 太郎! 後で語ごほうびあげちゃう!」
『油断するな小春! 来るぞ!』
「大丈夫、火球は慣れて・・・なるほどね」
なにやら人型は空中で静止し、口の周りに青いプラズマをほとばしらせ、力を溜めていた。
「太郎! 下へ回避よ!」
太郎と呼ばれたドラゴンは一気に降下し、放たれた光線がかすりながらもかろうじて回避する。
今までの火球とは違い、威力の集約したであろう光線はそのまま海へと命中し、巨大な水しぶきを立ち上げた。
「ああ・・・なんていう威力・・・! あれが当たったら私なんて跡形も残らないかも・・・でも・・・捕まえられればあれも私の物ねぇ!」
小春の興奮をよそに再び発射の態勢をとる人型。再び先ほどの光線が小春に向けて放たれる。
それに合わせるように小春は自身の鉄球を勢い良くその光線に向かって投げ飛ばした。龍麟鉱でコーティングされた鉄球は粉々に砕けるも光線の相殺した。
「つーかまえた」
鉄球を囮にして小春は瞬時に人型の後ろに回りこみ、首に腕を回し羽交い絞めにする。
「ベースが人なら首を絞めれば落ちるはずよねー? 生け捕りにしたら私が調教してあ・げ・る。うふふふふ・・・」
「離せ・・・殺す」
「!?・・・へぇ・・・日本語喋れるんだ。という事は調教もしやすいって事よね・・・!?」
人型は羽ばたき暴れるも小春を振りほどく事は出来ない。
「完全に入ってるから無理よん。諦めて楽になっちゃいなさい・・・?」
人型は突然暴れるの止め、首を絞めている小春の手を引き剥がそうとする。
「だからそれは無理・・・って嘘っ!? なんて腕力・・・!」
徐々に絞めていた腕が首から離れ、そしてそのまま小春の腕に噛み付こうとするが、瞬時に小春が人型を投げ飛ばし、人型は水面に着水する寸での所で羽を広げ海面すれすれを飛行し始める。
「しまった!」
『何やってるんだ小春!?』
戦闘機と今西中将がドラゴンで追うも、鹿児島付近に近づくと一気に海の中へ潜水し、そのまま浮上する事は無かった。
「申し訳ありません神代元帥。取り逃がしました」
『よい。今回様々なデータが手に入った。して発信機の方はどうじゃ?』
「着弾はしましたが、信号は水中から動きません」
『着弾した鱗を剥がしたか、もしくは水中に潜んでおるか・・・引き続き発信機から目を離さず、周囲の警戒に当たれ!』
「はい」
誠は椅子にゆっくりと腰掛ける。
「何やってんだ小春のバカは。せっかく捕らえたってのにみすみす逃がしやがって」
「小春の腕力に勝るとは・・・嬉しくない情報じゃのう・・・」
「あのバカ力でも無理となるといよいよ捕獲は難しそうだな」
「うむ。とにかく今回は多くの情報が手に入った。これを元に対策を練るぞい」
その後水中から発信弾の付いたままの鱗が発見され、人型の取り逃がしが確定した。
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