第14話 世界元帥級軍事定期連絡会議
大きな会議室に各国の軍の代表が着席している。
とはいっても、椅子に立体映像が投影されているだけで、実際本人が出席しているのは今回の議長国であるアメリカのみである。
会議室の一番前には金髪で、いかにも軍人らしい体つきをした筋骨隆々の男が立っていた。
「定刻になったので始めたいのだが・・・ロシア代表は君で間違いないのかね」
ロシア代表の席に座っている少女に問いかける。
「うん。パパが座ってろって。だから座ってるの」
中学生、いや小学生にも見える子が、熊のぬいぐるみを抱えてちょこんと座っている。
(ロシアの【ビッグベアー】アリーナか・・・齢15歳にして世界対龍ランキング97位の実力者・・・末恐ろしい子供だ)
「そうか・・・今回はいい知らせがあったのだが残念だ。では諸君、今回の議題は5年ほど前から確認されている突然ゲートが出現しドラゴンが現れる【イレギュラー】と同時期から目撃情報が出ている人間に近い姿をしたドラゴン、通称【人型】それと最後に神の書の予言にある災厄の期日が来年に迫っているという事だ」
中国代表の席に座っている男が発言する。
「5年前というとアメリカ・日本・イギリス・インド等が共同でゲートの向こうに調査隊を送った時期じゃないか。その事が原因じゃないのかね?情報によるとアレックスJr.君の息子を始めとする各国より選抜されたメンバーが参加したが誰も帰って来なかったと聞いているがね」
「李(りー)・・・口を慎め。前回の調査隊に参加しなかった挙句、侮辱するというのであれば取るべき手段に出る準備がこちらには出来ているぞ」
「おっと失礼。続けてくれ」
アメリカ代表のその男は視線を元に戻す。
「・・・イレギュラーの出現件数は近年増加傾向にある。これは神の書の期日が来年に迫ったための予兆と取るのが妥当な線だと思うが、1国で対応出来ない場合は近隣諸国と連携して適切に対応してくれたまえ。次に、近年確認され始めた人型の件だが、高クラスのドラゴンとの戦闘の際現れ、翼を持ち上空からこちらの戦力を監視するように佇んでいるだけの不気味な存在だ。こちらから戦闘を仕掛けなければ何もしてこないが、過去に戦闘を仕掛けた国はことごとく多大な犠牲を払った事は記憶に新しい事だろう。しかし、今回私が直々に率いた部隊により人型に戦闘を仕掛け、なんと人型の右腕と右翼を破壊する事に成功した」
会議室はざわめき始める。
「つまり来年の災厄に確実に戦う事になるであろう人型の撃破が可能だという証明が出来た。人類にはまだ生き残る可能性があるという事だ。各国、来るべきその時まで訓練を怠るな、今回私からの報告は以上だ。では質疑応答に移る、誰か質問のある者は挙手をー」
各国の代表から次々に質問が飛び交いアレックスJr.はその都度回答を行っていった。
そうして時間は過ぎ今回の世界元帥級軍事定期連絡会議は閉会した。
全ての代表が退出し、アレックスJr.のみが残った会議室。
そこには片膝を突き、吐血しているアレックスJr.の姿がそこにはあった。
「アレックス!」
会議室の外で待機していた女性が慌てて駆け寄る。
「人型にやられた傷がまだ癒えていないのに無茶しすぎです」
女性はアレックスJr.に肩を貸す。
「私が直接立って堂々と戦果を報告する事が、今一番重要な事なのだ」
血をスーツで拭いながらなんとか立ち上がる。
「人型との戦いで一個中隊が壊滅し、私自身もこの様だという事を他国に知られる訳にはいかんのだ。人型は倒せるという希望。そして情報に踊らされ、未知の素材である人型のコアや素材欲しさに戦闘を挑み、強国に自滅してもらわねばならん」
「まったく・・・あなたはとんだ悪人ですね」
「私にとって正義がアメリアで悪は逆らう国だ。私はその信念を貫いているだけだ」
「私にとっての正義は貴方です。悪は貴方に歯向かう者です。では参りましょう」
アレックスJr.と金髪の女性は2人で歩いて会議室を去って行った。
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