第7話

屋台の人は、みんな優しかった。人の流れからそれて、彼等彼女等の目の前に躍り出れば、声をかけてあたしを褒めて、お別れにヨーヨーや綿飴をくれる。きのままにそんなことを繰り返していたら、あっという間に両手で抱えきれないほどの、善意の花束になった。

 しばらく見つめて、ひとしきり感動したあと、頬にぬるっとした感触がつたった。何か大きくて肉厚な舌に舐められた。見ると、和装に身を包んだ人々がひしめき合って、その間を縫って泳ぐ尾の長い熱帯魚。あたしは踵を返して、熱帯魚を追った。秋にみのる紫色をしていた。

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