第14話 課外活動
国語に限らず残りの四教科もほぼアキの予想問題と同じだった。
つまり余裕で回答できた。考えることさえ不要だった。
ここまで問題が類似しているとなると、漏洩が疑われるレベルである。魔法を使って試験問題を事前に入手したのじゃないのだろうか。
透明になって侵入するとか、関係者に暗示を掛けるとか。小説なんかでよく見かける闇魔法的な手段を使っている可能性が否定できないのは怖いところだ。
「何かやった?」
試験がすべて終わってからそう聞いたけれど、アキは微笑むだけだった。
ああ、なにかしたんだと悟ってしまった。これ以上聞いてはいけないやつだ。
一次試験はそんなわけで高得点で突破した。全員が全教科ほぼ満点で、不正を疑われるレベルだろう。
孤児院のメンバーにとって見れば、特別難しい問題ではなかったから、予想が全て外れても、きっと高得点は取れたと思う。それでも、公立高校の問題よりは格段に難しくはあったけれど。
面接試験も問題はなかった。
アキの指導のおかげで、立派な猫を描くことができたからだ。
面接官は、孤児院出身者だからと多少見下していたのだろうけれど、こっちは英才教育を受けた魔法少女だ。小綺麗な格好で、それなりに丁寧な言葉づかいをしただけで好印象を与えたらしい。
不良がいいことをすると美談になる、みたいなあれである。
とまれ、十三人の魔法少女は一人も欠けることなく、如月女学院高等部トヨハラ分校に合格したのである。
「高校での三年間は、ここではできなかった色々なことを経験してもらって、魔法少女としての幅を広げてもらいます。在学中に卒業後の進路についてもちゃんと考えてくださいね。魔法を抜きにしてもあなた達はなんにでもなれるだけの能力をすでに持ちわせているのですから。ただ、学区では魔法は使わないようにしてくださいね。バレるとやばいことになりますから。クラスのみんなには内緒ですよ」
合格祝いと称したパーティーで、理事長が普通のことを言っていた。どっかの魔法少女っぽいセルフは混ざっていたけれど。
如月女学院高等部には制服がある。
白を基調としたブレザーで、スカートは淡いグレーのプリッツだった。可愛らしくて人気なのだけど、威力はそれだけではなかった。
如月女学院の制服を着ていると、それだけで特別扱いされるのだ。平民だろうが孤児だろうが一目置かれる。下級貴族と同等以上の権力が手に入るのだ。一時的ではあるけれど、特権階級となるのである。多少傍若無人な振る舞いをしたとても許される。
平民であれば、卒業と同時にその力は失うのだけれど、在学中に実績を積めば下級貴族の爵位をもらえたりするらしい。
あまり興味はないけれど。
入学式を間近に控えた夕食後、アキが一人で部屋にやってきた。
「遅い時間にごめんなさいね」
「いや構わないけど、珍しいな」
アキが訪ねてくることなど、ここに来てはじめてのことである。なんとなく嫌な予感がしてしょうがなかった。
「部活は何にするか考えていますか」
入学案内には、課外活動の記述があった。全員が部活ににはいらなければいけないと書いてあった。クミはパソコン研究部、リアは空手部に入るつもりだ。部活なんて面倒くさいことは正直やりたくないのだけれど、仕方がない。
「いや、どうしようかとおもって」
決めかねていたのは事実だった。
魔術研究部でもあればよかったのにとか本気で思っていた。体育会系は遠慮したいので、アニメ研究会で魔法少女でも研究しよう。
「なら、私と一緒にしなさいよ」
万能の美少女であるアキは一体何に所属するつもりなのだろう。ただ、なんとなく厄介な気がする。気のせいではないはずだ。
「やだよ」
「は?」
ありえない言葉が帰ってきた。
お嬢様設定で口にしていい言葉じゃない。
「何処に入るつもり」
仕方なく、あくまでも仕方なくそう訪ねた。
別のにアキの口調が怖かったわけじゃない。
「生徒会に入ろうかと思っていますの」
あ、そうだね。
アキならぴったりだ。万能のお嬢様(風)だからね。きっと誰もが認めるだろうし、問題なく活躍するだろう。
「は?」
でもね。
アキ以外は無理だと思うわけよ。
確かに生徒会は会長以外の選挙はない。志願して認められえば入ることは可能だろう。当然アキなら問題ない。成績は悪くないけれど、これと言って崇高な思想とか持ちわせていないから、生徒会とか似合わないから入りたくない。
てか、やりたくない。
ダメ、絶対。
「あなたならできるわ」
赤い人の妹みたいなセリフではごまかされませんよ。モビルスーツに乗るわけじゃないんだから。載ってみたいけれど。
魔法で作れるかな。
「無理でしょう」
答えは簡単だったけれど、ついつい丁寧口調になってしまった。
けれど、一体この美少女は何をしたいのだろう。
「生徒会に入って、何をするつもり?」
「生徒会長と仲良くなりたいのよ」
意味がわかりません。
「私ね、本当の貴族になるつもりなの」
アキの夢は理解した。
でも、一緒に行く必然性はわからなかった。
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