第13話 高校受験

 中学までの義務教育過程は、全て孤児院で行うことになっていたため、魔法少女となってから数年間は、孤児院の中で勉強と訓練に明け暮れた。教師は何処かの塾の先生なのだろうとてもわかり易く。勉強は楽しかった。


 たまに孤児院の外に出ることもあったけれど、魔法の使用は厳禁だ。

 そんなのが知れたら大変な事になる。

 平穏に暮らすことができなくなるとみな理解していた。


 孤児院の職員は信用のおける人間だった。研究員は暴走しそうだが、彼らなりにこの能力の秘匿性は理解していた。というか、漏らしたら命がないというのを彼らは強く言い聞かせられていたらしかった。


 この国において高校進学は義務では無いし、必須でもない。実際、進学せずにそのまま就職する人のほうが多かった。


「全員一般枠で如月女学院へ進学すること」


 久し振りにやってきた理事長は、いきなりそう言い放った。

 魔法少女の学力レベルは相当だと思う。大学受験の問題でも余裕で解ける。

 まさに英才教育だった。

 

 学力は問題無いけれど魔法少女には友達がいない。そう言う意味でも高校に通うのはいいことだ。ただ残念なことに、如月女学院は名前の通り女子校だった。

 男がいない。

 それはかなり残念だった。


 如月女学院は、下級貴族の吉野家が北部の都市で創立した学校で、保育園から大学院まで揃っているいわゆるお嬢様の学園だ。貴族や要人のご令嬢御用達ではあるけれど、それ以上に実力主義だった。一般人でも、もちろん孤児でも、優秀な成績をおさめれば入学は可能である。


 受験するのは、トヨハラの分校だ。

 本校より多少レベルが下がるから、狙い所ではある。

 まあ、心配するほどのことはない。

 全員学力には自信があった。


 志望校が一緒なので、毎日全員で勉強会を行った。改めて雇うこともなく、アキが中心となって、数名が先生役となった。

 美少女で、魔力も大きく、学力も優秀とか、アキはどんだけ完璧なんだろう。

 何一つ勝てないため、悔しさを通り越して、信仰するレベルだった。

 手を合わせて拝みたい。


 魔法の訓練も順調で、一番魔力との相性が悪いアイコでさえ、それなりの魔法が使えるようになった。同じグループだから、特に面倒を見たけれど、教えたかいはあったと思う。普通に爆裂魔法くらいは出せるようになっていた。

 倒れたりしないよもちろん。


 アキは当然何でもできた。複数の属性の魔法を併用したり何でもありだ。小説やアニメやゲームなどで描かれている魔法は、ほぼ全て実現できた。メテオとかやってみてほしかたたけれど、街を破壊するわけにはいかないから諦めた。

 でも多分、アキなら出来そうな気がする。

 召喚魔法だけは、まだチャレンジしていないそうだ。

 なんだかやヤバそうだと言っていた。


「世界征服とかできるんじゃない」


 あまりにもチートなのに腹を立てて、嫌味を込めてそう問いかけた時、アキは寂しげに笑った。


「そんな面倒なことしないですよ」


 まあ面倒だよな。世界征服。、


 リアは、主に攻撃系の魔法を率先して取得した。アキが実現した魔法のうち特に攻撃力の高いものをマスターしていく。

 攻撃は最大の防御なり。先手必勝。

 それがリアの座右の銘だった。

 リアは、他人を助けるために誰よりも強いことを選んだ。

 単純な攻撃だけなら、アキに迫る勢いだった。


 以外だったのはクミである。

 巨大な水属性の魔法を使えるのに、攻撃より回復の魔法を多く覚えた。誰よりも強くなりたいと考えていたクミは、アキとリアのとてつもない力に絶望し、別の道を模索した。その結果が回復魔法だ。

 もちろん攻撃も防御も、相当の使い手だ。すべてをそつなくこなす万能タイプと言えるだろう。

 それでも、癒やしを求めた。

 それは、意外とクミには適していたようだ。アキはそれほど力を入れてなかったから、回復系の魔法はクミの方が得意だった。


 アキやクミとそれほど魔力の量に違いはないから、差別化を測るために防御系の魔法を中心に練習を重ねた。おかげてリアの攻撃はかなり高確率で防ぐことができる。もちろんアキの本気にはかなわない。

 どの属性もそれなりに使えるけれど、防御がメインだ。一番強力なのは光属性で展開した障壁だ。それは殆どの攻撃を反射することが可能だった。

 結論から言えば、防御に特化したのは正解だった。

 それが一番合っていた。


 魔法少女ではあったけれど、訓練の一環で、武器も使い方も覚えさせられた。

 一体何を目指しているのかわからない。おかげで重火器から刃物まであらゆる武器を使えるようになった。武器を魔法で強化することも可能である。

 これは無敵じゃないか。

 本当に、何を目指しているのだろう。


 そうこうしているうちに受験当日を迎えた。


 如月女学院高等部には一般受験と特別受験があり、貴族様は特別枠なのでほぼ全員が合格する。というか貴族はほぼ保育園からの持ち上がりで、高校から受験するのは珍しい。

 魔法少女の十三人はもちろん一般枠である。

 一般枠の募集定員はほぼ一クラスの二十四名で、受験生は計三百名。倍率は実に十三倍だった。

 

「頑張りましょう。落ち着いていけば大丈夫です」


 後で面接があるけれど、とりあえず筆記を突破しなければ話にならない。アキの号令に全員がうなずいた。

 

 最初の科目は国語だった。

 開始の合図とともに問題用紙をめくり中を確認する。


「あ、余裕だこれ」


 国語の問題は、アキの予想問題そのままだった。

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