新しい日常、にて 4
飲もうぜと誘われたものの、もちろん飲むのはソフトドリンク。ジンジャーエールがあったので、それをもらった。運動後の喉に染みる炭酸に、カーッと身体が熱くなった。
料理も摘みつつ俺は、人々の間を渡り歩く黒石の金魚のフンになっていた。
ここに来ている人の中では、おそらく俺たちが最年少だろう。綺麗な白髪の男性がいれば、OLをしていそうな女性もいる。広い年齢層の人がいた。
共通している点は身に纏う雰囲気に余裕があることだ。俺みたいに不安を露わにしている人はいない。
しばらくして、黒石が白川の次に俺を呼んだ理由がわかった気がした。熟女趣味なんだよな黒石って。
「たくさん食べるのねぇ、学生さん?」
ふくよかな体型の女性が近づいてきた。白を基調としたマスクをドレスをしていて、白い肌も相まって雪だるまのようだった。
「そうっす」
部活終わりの腹の虫に要求された俺の皿の上はたくさんの料理が積まれていた。物珍しさか目立っていたか、大人の女性によく絡まれた。
「背が高いわね、何かスポーツやってるの?」
「バレー部に入ってます」
「へぇー! いいわねぇ」
「ザッス」
何がいいんだかわからないが、とりあえず頭を下げておく。
「こいつはここに来るのは初めてなんですよ」
婦人は目を丸くしていた。
「チケット手に入れるの大変だったでしょう?」
「ご婦人のような人に会うためならば」
歯が浮くようなセリフをよく言うよ、と黒石を横目で見た。その時、再び扉が開いた。そこにいた人々は、決まりのように、扉の方を向く。たとえ秘密が守られているとしても、心のどこかで不安があるのだ。
新しくやって来たのは、真っ赤なドレスとマスクを身に付けた女性だった。
「あのお嬢さん、今日もいらしたのね」
「今日もってことは、ご婦人もよく来てるんですね」
「そうなのよぉ」
二人で盛り上がっているところだが、俺はその女性から目が離せなくなっていた。
なんでここにいるんだ、生徒会長。
注がれ続ける視線に気づいたのか、目が合った。向こうの歩みが止まる。
俺が一歩踏み出すかどうか迷っているうちに、二人組の男が足早に近づいて行った。会長が来るのを待っていたのかもしれない。
二言三言、話していたようだが、男たちは俺の方を向いてヤレヤレといった顔をした。
どうしたのかと思ったが、会長が俺に向かって微笑んだ。
「あら、坊や、呼ばれているじゃない」
「いいじゃん、行ってこいよ」
もう俺のことはどうでもいいのかよ。
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