第8話 ここが紅蓮の都

「見えた見えた!あれがエグゼだろ?赤いな。」


 空から見たエグゼはなんとゆうか…赤い。


「なんか赤い町だね〜でも熱くないね〜」


 シェルも似たようなことを言う。

 さすが親子だな。語彙力がない!


「先程攻撃してきた者の仲間がいるかもしれないので御用心を」


 ユアはそう言うと、ワイバーンを降下させる。

 お前が先走ったからどんな奴かわからんがな。

 

 意外に早く着いたな。

 

 俺が一番乗り〜とユアの前に出るとシエンが凄い勢いで俺の前に出てくる。

 

 こいつ…負けず嫌いなのかな?

 大人な俺はいいよいいよ。先に行けと手で合図する。


 エグゼに到着すると、


「主…私が一番でしたね。約束の願いを聞いて貰ってもいいですか?」


 少し自慢げなシエン。

 

 約束してねぇし!

 何勝手にレースにしてんの?

 レースだったら本気だすわ。


「シエン?約束したか?」


「さっき手で俺の負けだって。願いを叶えてやるって。」


 してねぇよ!

 先に行けってことだよ!

 どうやったらあれで願いを叶えるに見えるの?


「因みに願いはなんだ?無理なものは無理だからな。」


「膝枕…して下さい…」


 なんだその願いは。

 普通逆だから。

 俺が頼む方だから。


「まぁ…うん…それぐらいならいいぞ」


 エグゼの門の出入口で横になるシエン。

 

 ここでかよ!せめて人目のないとこで。

 みんな見てるよ?

 シエンは横になって動かない。

 ただの屍のようだ…


 シエンを端に引きずり、膝枕をする。

 シェルとユアがいいなぁ〜という顔で見てくる。

 恥ずかしい…知らん人から見たら、男同士だからね?

 シエンは兜で顔も髪も隠れてるから。

 てか兜ぐらい取れよ!


「そろそろいいか?みんな見てるから…俺は一応お尋ね者だから目立ちたくないんだよ。」


「周りに誰もいなくなればもう少しいいですか?」


 シエンから少し殺気が出ている。

 膝枕のために周りを消す気満々だよ。

 どんだけ膝が恋しいんだよ。

 シェルとユアが代わってと言っている。

 膝枕が俺の職業じゃないからね?

 シェルならしてやるが。


「あぁもう終わり!今日は取り敢えず宿を探さないけんだろ」


 シエンを置いて立ち上がる。

 シェルが膝枕の代わりといわんばかりに背中におぶさってくる。

 シェルをおんぶしたまま宿を探す。


 あったあった!


 見つけた宿屋に入ると、一階が食堂になっていて、二階が宿みたいだ。

 食堂で飯を食べている獣人達がチラチラ見てくる。


「ここは獣人が多いな。」


 宿の店主に聞くと街によって種族の色分けがあるらしい。


 ここは獣人が半数以上を占めているみたいだ。


「それで部屋は空いてるか?」


 相部屋が一つと三人部屋が一つ空いてるみたいだ。


「じゃあ三人部屋を一つでいい。ユア金をくれ」


 ユアが店主に金を渡すと鍵を貰う。

 

 荷物もないので一階の食堂で先に飯を食おうと席に着く。


「なんでもいいから飯をくれ。あとシェルにミルクくれ!」


 シェルが喜ぶと周りから笑い声が聞こえる。

 ゴリラの獣人集団だ。


「ここは酒場にもなってんだよ!酒も飲めないやつはここに来るんじゃねーよな」


 馬鹿にしたように、周りに肯定を求める。


「そうゆうお前のグラスの中身も白く見えるがなんだそれは?」


「れっきとした酒だよ!カルールミルクだ!知らんのか?田舎者め!」


 ミルクじゃねぇか!

 成分関係ねぇよ!

 名前にミルクが入ってたられっきとしたミルクだよ。

 ユアは聞くに耐えなくなり、席を立つ。

 シエンもここでは兜を取って食べられないらしい。

 俺はそんな二人を見て、知〜らね。とシェルと飯を食いだす。

 笑っていた獣人達も立ち上がり、やんのか?おっ?とか言ってるのが聞こえてくる。


「俺たちに手を出してただで済むと思うなよ?奏帝王様が黙ってねぇぞ?多分…わかったらこっちに来て酌しろ」


 ユアとシエンが歩いて側によると、


「男はいらねぇよ!姉ちゃんだけでいいんだよ!」


 シエンの事を手で小突こうとした男の左手が床に落ちる。

 男は何が起きたのかわからないが痛みで叫びだす。

 何をした?と周りが騒ぎたてる。

 

 今のシエンの一刀も見えんとかダメだなこいつら…もぐもぐ…

 ピーマンを端によけて食べるシェルに、


「シェルよ…野菜もちゃんと食べないと大きくなれんぞ?好き嫌いしたら農家の人がかわいそうだろ?」


 でも苦いから嫌と言う駄々っ子シェル。


「お父さんだってピーマン食べたくないもん!噛まずに水で流し込んでるもん!」


 あっ…つい言ってしまった… 

 シェルがニヤニヤしてるな。

 父の威厳が…


「こっちで血出して揉めてんのによく飯を食えるな!ピーマン野郎!大体、お前が元凶だろうが!」


 俺は緑でも苦くもないわ!


「もういい…口を閉じて生ける屍となれ。悪夢ナイトメア


 敵対していた客達は全員がユアの魔法で廃人と化した。


 ユアとシエンが席に戻り食事をする。


「客もあんなだし兜とって飯食えよ。」


「いえまだ店主がいるので…」


 はいはい。ですよね。


「店主!飯を食い終わるまで外に出ていてくれ。死んでも知らんぞ?」


 店主は動かなくなった客たちを驚きの表情で見ながら、


「あんたら儂は知らんからな。こやつらにこんな事をしたら奏帝王様が黙ってないぞ。多分…悪いことは言わんからさっさと街から出た方がいい。」


 お前がここから出て行け。

 店主だけどもさ。

 それにさっきから小さく多分って言ってるがなんなんだよ。


「そうか。まぁ俺達の事はほっといてくれ。それより…」


「こやつらは生きてるのか?目が死んで痙攣してるが…」


 いや話し聞けよ!

 早く出て行け。

 

 シエンが立ち上がる。


「待て待て。シエン、お座り」


「主…そうゆうプレイは誰もいない時にお願いします。」


 違ぇよ!

 なに勘違いしてんの?この子。

 やっぱ変態じゃねぇか!


「もういい。店主。部屋で飯を食うからな。金は払ったんだからいいだろ?」


 店主は諦め部屋に料理を運んでいく。

 明日の朝には出て行ってくれと念を押されたあと、廃人をどうにかしてくれというので、ユアが爆熱魔法で塵にした。


 部屋に行き食事を再開するとユアが、


「大事な話しがあるんです!」


 いつも以上に真剣だな。

 何か問題が発生したか?


「ベッドは三つ…どう寝ますか?私はエミル様となら一緒で構いませんよ!」


 どこに真剣なんだよ。

 シェルに決まってんだろ。

 シェル一緒に寝よ〜とゆうと、うんと言って抱きついてきた。


 明日は髪を切ろう…

 うっとうしくてたまらんからな。

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