第5話 風呂場にスライムを置くんじゃねぇ

「シェル〜一緒に風呂に入らないか〜」


 この伸び切った髪もどうにかならんもんか。

 切りたいな…

 封印の間に伸びたんだろうか?

 いや元々長かったんだろうな。

 シェルはショートだしな。


「入る〜!」


 シェルは走ってきて俺の背中に飛び乗る。

 ラスピリは…出掛けたのか。


「なんだこの風呂!泳げるじゃねぇか!広すぎだろ。」


 シェルと一緒に背中を流し合いっこしたあと、うわぁいと言ってシェルは湯船に向かって走り出しお尻から飛び込み、泳ぎだす。


 子供はいいな…俺も一緒になってやったら怒られるだろうか?

 いや、誰にだ!

 注意をしてくるシェルがやったんだ。

 これで怒られたら理不尽過ぎる!

 やるなら今っ!


「ひゃっほー…い!」


 俺は湯船に向かって走り出すが、地面にヌルヌルしたものが…

 それを踏んだ瞬間、天井が見える。

 ゴンッ!

 鈍い音とともにきれいにすっ転んだ。

 シェルはこっちを見ながらなぜか10点と言っている。


「エミル様大丈夫ですか?このお風呂にはスライムがいますので飛び込みは危ないですよ」


 ユアはタオルを巻いてなぜか風呂に来ていて、そのまま体を洗いだした。



「いやいや、お前なんでいんの?というより風呂にスライム?」


 くっ…全部見られてた…恥ずかしい…

 シェルは無事に飛び込めて気持ちいいだろうな。


「スライムは粘液で風呂掃除などキレイにしますので。私はエミル様の警護をかねて。必要ないとは思いますが。外はシエンが警護しております。」


 うん。そうなんだ。

 でも誰もこの建物に気づかないんじゃないかな?

 俺も気づかないのに…

 折角のシェルとの親子水入らずがなぁ。


「このような場で申し訳ないのですが。一つ聞いてもよろしいでしょうか?」


 一つと言わず何でも聞いていいよと言い、

 シェルとお湯の掛け合いっこしながら話しを聞く。


「記憶を無くされてるとのことですが…えぇと…なんと言いますか…」


 なんなんだよ。はっきりせん奴だな。


「今のエミル様は昔と比べ人が変わったように思います。いや、いい意味ですよ?優しいというか、丸くなったというか…」


 ふーん。昔と変わったと言われても全然ピンとこない。

 なにせ全く記憶がないから。

 ただなんでかな?記憶がないのに、常識的なものとかはわかるんだよなぁ。

 人体の不思議発見だな。


「そうか…」


 俺にはシェルがいてくれたらいい。

 娘ってほんとかわいいな。

 思い出を思い出せないのが残念だ。


「ここで話すのもなんなんですが、まずは『暗黒星雲ダークネビュラス』の方々を探すのを第一の目標とされてはいかがですか?」


 ユアは体を洗い終わり、湯船に浸かる。

 

 まぁ仲間は多いほうが楽しそうだしな。

 

 にしてもだ!

 ユアは脱いだら色々とイメージが変わるな。

 町で会ったときは、漆黒のローブにアサシンマスクの姿だったから顔があまりわからなかった。

 髪は紅く腰まで長いが、寝起きなのかと思う様な髪だったが。

 今、洗ったばかりなのに右に左にはねている。相当なくせ毛だな…

 マスクを取るとそんなに大人には見えないが、胸はまぁまぁありかわいいな…ヌフフっ…

 

 シェルが桶にお湯を入れて俺の頭にかける。

 俺はエッチな事を考えると顔に出てるのか?

 それともシェルの勘が冴えてるのか…


 ただシエンの中身の方が気になるな。

 ガチガチの鎧で目さえ見えないもんな。

 たまに目元が赤く光るんだが話すと声は女性だ。


「探すと言ったが、やっぱり居場所はわからないのか?」


 ユアと話していると、シェルがのぼせそうだな。

 また明日、話しを聞くんでもいいが。


「そうですね…多分この地獄道にはいないかと思います。エミル様の封印を解く手段を今でも探してるかも知れませんね。」


ガラガラ…ドアが開く音がする。


「失礼します…」


 兜を被ったまま全裸のシエンが入ってきた。

片手には自分の背丈ほどの大剣を持ちもう片方にはタオルを持って。

 

 シエンだ…やっぱり女だったか…

 ………いやいやいや違う違う違う…色々おかしいだろ!何か怖ぇよ!

 なんで風呂に兜?大剣?なんかツッコミづらいわ!

 

 ユアはシエンに注意をする。

 タオルを巻かないとはしたないと。

 

 いや間違ってないよ?それは正論だよ?

 でもなんかズレてない?


 シエンは大剣を立てかけまず頭から洗い出す。


「くっ…」


 シエンは頭を洗うのに兜が邪魔で洗いにくそうだ。


「取れよ!そんな隙間に手をつっこまんでも兜取れば洗えるよ!なにが「くっ…」だよ!」


 しまった…思わずツッコミをいれてしまった…

 

 なんだこの変態騎士は…見た目はただの変態だよ…どんだけ兜取りたくないんだよ!


「そのでかい大剣はなんだ?」


「主の護衛用です…」


 こんな姿の奴に守ってもらいたくねぇよ…

 いま、敵がきたら相手もびっくりだよ…


 シェルが湯船に水死体のように浮かんでいる。


「あぁー!シェルごめんよ!変態の相手してたら忘れてた」


 シェルを抱き上げ急いで風呂から出ようとする。


「変態…?敵!?」


 シエンが小さく呟き、大剣を手に取る。

 お前の事だよ。

 なんなんだこいつは…


 シェルの体をササッと拭き服を着せダッシュで部屋に戻る。


 部屋に戻るとラスピリが戻っていた。


 シェルがのぼせた事を告げ、風魔法を使ってもらう。


「ところでどこにいたんだ?」


 外の風にあたりに散歩に行ってたらしい。

 元気だなこいつ。

 コンコンっ…ドアがノックされる。


「ユアです。シェル様のご様子はどうでしょうか?」


 気を使ってきてくれたのか。

 

 大丈夫、今日は疲れてるからまた明日話すと言い今日は、床につく。

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