第3話 お金貸して?

 地獄という割には賑やかな街じゃないか。

 イメージと全然違うんだが…

 

 さっきの風呂場といい…血の池じゃないんだな…

 あぁもう少し目に焼き付けとけばよかったな…

 グーパンと足蹴りしか思い出せん…


「腹が減ったな。取り敢えず飯にしないか?」


 ラスピリは驚きながら、声を大にする。


「いやいやいや、先に服でしょ!さっきからイチモツがはみ出してんですよ!周りの目が気にならないんですか?」


 なるほど…視線を感じると思ったら俺のイチモツを見てたのか…

 

 シェルの視線が痛い。


「そ、そうだな。シェルもオシャレしなくちゃ臭うからな。」


「おと様、ちんちんブランブラン。振り子?」 


 やめなさい。

 女の子がそういう事を言うのは…

 誰に似たんだか…

 

 街をぐるっと簡単に回り、服屋を探し中に入ると、シェルに似合いそうな服を選んでいく。

 フリフリのワンピースか…

 いやこっちのもかわいいな…

 どれも似合いそうだから困るな。


「おと様、自分で選んでいいですか?」


「そ、そうだな…俺は自分のを探すか…」


 一人で舞い上がっていたのを恥ずかしく思いながら服を適当に着ていく。

 

 シェルも自分で選んだ服を着ていく。


 ボーイッシュスタイルが好みなのか?

 お父さんはその格好…大好きだぞ〜!

 猫耳パーカーとか…たまらんですわ!


 とか思いながら気持ちよく店から出ようとしたら店の親父に止められる。


「ちょっとちょっと!お金払って貰わないとダメだよ!」


 金か…そんなものはないな…


 ラスピリを見るが、ないと言わんばかりに首をフリフリ横に振る。

 えっ?ないの?

 なぜ服を勧めた?

 あぁ…だから布を拾って来たのか…

 使えない貧乏妖精め!


「あぁー。親父つけといてくれ。金がはいれば今度持ってくるかもしれんし、持ってこんかもしれんから。あとこの布切れ買い取ってくれ。」


 その言葉に親父は驚く。


「いや持って来る気ゼロじゃねーか!もっとうまい言い回しがあるだろ!そんな汚いゴミ買い取れるか!処分代も取るぞ!」


 チッ。頭の固いやつだ。


「親父…少し考えてみろ。お前の物は俺の物。俺の物はシェルの物…だろ?」


「どんな理屈だよ!考えんでもわかるわ!俺の物は女房のもんだろ!」


 …尻に敷かれてんなぁ…

 とはいえ無いものはないのだ。


「わかったわかった!金はマジでないからここで働いてやる。1時間だけだぞ?ったく」


「なんで上からなんだよ!お前みたいなおっさんいらねーよ!無いなら脱げよ」


 さすが地獄だな…

 ここで脱げとか鬼畜なのか?

 

「まさかっ!…俺のたくましい体を見たいのか?変態め!」


「違うわ!大体店に来た時ほぼ全裸じゃねーか!なんなの?疲れるんですけど…」


 店の親父が疲れて弱っていく。

 もう少しか?もう少しなのか?

 

 突如、店の前に空間が割れ亀裂ができた。

 

 これはルインが使った転移ゲートか?

 

 中からこちらに歩いてくる漆黒のローブを纏った魔女風の女と、鎧を身に纏った騎士が歩いてきた。


 ルインとエルドラに雰囲気が似ているな…だが…違う…

 

 二人はエミルの前に着くと片膝をつき、


「エミル様…あぁ…よかっ…た。お久しぶりでございます。ルイン様の言に従いお迎えに上がりました。」


「主…お久しぶりです。」


 魔女風の女は涙ぐみながら、騎士はズズッと鼻水を吸い込む音がする。

 いやお前ら誰だよ。名乗れよ。

 だがそれよりも、


「あぁ…久しぶりだな。ところで…金貸して!」 


 取り敢えず手を合わせ頭を少し下げてお願いしてみる。

 見ず知らずの人に…

 いや向こうは知ってるんだけどね。

 

 魔女風の女は驚いて立ち上がり、慌てた態度で、

 

「エミル様おやめ下さい。我が主がそのような態度をするのは。今まで通りに命じてくださればよいのです。」


 おぉすごい…命じれば何でもしてくれんの?

 ムフフっ…

 痛い…なんかまたシェルの視線が痛い…心が透けてる…見透かされてる…

 

「じゃあこの頑固ジジイに服の代金払っといて。しつこ過ぎて困ってたんだよ。俺の巻いてた布切れの処分代も」


 鎧の騎士はその話しを聞き、兜の目元から赤い光をチラつかせる。

 

 騎士は金を払うとエミル達には気づかれないように布切れは持って帰ると親父に言い、懐にそっと仕舞い込んだ。


 まずは落ち着けるところで話しがしたいという事になり、二人の根城に向かう事になった。


 魔女風の女が転移ゲートを開き、女は少し用事があると言い騎士が案内をすることになった。

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