閑話休題。お星様〜企画効果〜

 季節はもう夏に差し掛かっている。

 北に山を、南に海へ繋がる平野を持つシレアの夏は、厳冬とは対照的に比較的過ごしやすい気候が続く。桜の盛りが過ぎ、薔薇の花が落ちる頃になると、朝晩の冷えも和らいでむしろ微風が心地よい。


 この時期になるとシレア王城の窓も日中は開け放たれることが多くなる。風が揺らす木の葉擦れの音は、執務室にて書類と向き合っている最中に実に耳に快いものだ。


 ものなのだが。


 どういうわけかこの王城の主人の一人であり、まさにいま現在、執務室の書見台から顔を上げて青葉に目を休ませていた人物の耳に落ち着きのない足音が届く——と思えばその直後、木製の扉が勢いよく開き、安らかな静寂が破られた。


「殿下ぁっっ!」

「……最近、どこかの誰かに似てきてはいないか、シードゥス」


 足音の主は扉から駆け入ってそのまま書見台に駆け寄り、主人の目前で急停止した。その主人本人は窓の外から目を背けずに答えるばかりなのが、シードゥスと呼ばれた下男の青年の苛立ちを一層募らせることを解ってか。


「貴方がそういう態度だからこっちがこうなるんじゃないですか! ちょっと見てくださいよ、これ! これまで周辺国で最上位にいた我が国の書籍がほんの一ヶ月くらい前に出た他国のものにこの短期間で追い抜かれちゃったんですってば!」


 そう下男が叫ぶと、この国の王である主人、カエルムは好奇をあらわにして振り返った。珍しいことである。


「その書籍というのは? 近頃、忙しすぎて新刊の確認が出来ていなかったのだが、早々に手に入りそうか?」

「……あからさまに読みたそうな顔するのやめてください」

「ああ、これか。なんだ同じ表題で他にも高評の作品が多数あるじゃないか」


 下男が手に持っていった書類はひょいと取り上げられ、カエルムは認められた作品に目を通す。無類の本好きであり、尚且つ臣下がどんなに焦ったところで他国との競争にはさほどの熱意を燃やさないこの人物には、もはや何を言っても無駄だ。そう下男は悟り、愚痴の吐口は王の右腕である兄貴分に頼ろうと心に決めたのだった。



 ***


 いつものパターンです。自作の長編より、勝手にスピンオフ。


 さてお星様の数ですよ。「葉桜の君に」、自作の中にて120になりました。カクヨムコンに参加したファンタジー「天空の標」(上記のスピンオフ作品)が、これまで自作中では107でトップにおりましたが、「筆致」企画はすごいですね。ものの一ヶ月少しでもう追い抜きました。100越えが夢の領域である私にとっては、信じられません。「天空」の100越えが本当に嘘かと思ったのに。


 過去の「筆致」企画でも、100を超える作品はかなり出ています。特に「きらり」は皆さん、ものすごい数になってます。今回の「葉桜」も上位の野々ちえさんは150を超え、200いくんじゃないでしょうか。


 確かに筆致企画は皆さんが積極的に読みにきてくださるので、星も増えやすいでしょう。新たな交流のきっかけにもなっているのは事実です。企画参加者の方で、企画作品じゃなくて企画外の書き物の方を読みにいらっしゃる方もお見受けしましたし、輪が広がる。

 ランキングで見てみますと、「恋愛」や「ファンタジー」はかくよむの中では熾烈な争いのようです。というのは、第一作の現代ドラマは現在、日間で15位。第一作よりも昨日いただいた星やレビューの多い第二作の「恋愛」カテゴリーはランキングに入らず、という状況だからです。


「その他」や「歴史」もランキング入りしやすいかもしれません。


 あと、参加してみて思ったのは、やはり早くに投稿したほうが読まれやすい、星も入りやすい、という傾向はあるなぁと、見ていて思いました。これは自他共に二作目投下後のプロセス観察より。

 その傾向からすると、企画の中では遅めに参加した私の第一作目の作品は、それにもかかわらずこれだけ読んでいただいたのは大変ありがたく思っております。

 参加が遅れました関係で、他の方の葉桜は5月に入ってから時間を見つけて読んでいます。フォローだけ押してまだ読みに行けていない方々、申し訳ないです。


 というわけで、目下進行中の「雪」の筆致作品、読まれたい方は早めの投稿が有効ではないでしょうか。

 私は無理です。相当後になります。


 従いまして、自分の掟の関係で、自作が書き終わるまで皆様のも読めません。あしからず。


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