第2話 宇宙人、付いてくる
「おはよーございまーす!」
廃業したコンビニを改装して社屋にしている株式会社
入口を入ると正面から右手にL字の受付カウンターが設置されていた。プライバシーが守られる様に等間隔でパーティションで仕切られている。
「おはよー」
開店前にカウンターの拭き掃除をしていた経理担当の
「誰?」
「ああ……」
「知り合い?」
「お客さんです」
「おはようございます」
ペコリと宇宙人は笠根木に頭を下げた。
「いらっしゃいませ……」
笠根木も背中に雑巾を隠して、お辞儀した。
「すみません、営業時間前に」
「いいえ、どういたしまして。どうぞ、こちらへお掛けください」
宇宙人は笠根木に案内された一番奥のカウンターに腰掛けた。
矢芽郎もカウンターを回り込んでそそくさと宇宙人の前に座った。
「じゃあ、改めてお話を伺いますね」
「はい」
「私は本日、ご担当いたします天神です」
「私はムリリです」
「ムリリ様ですね、ありがとうございます」
矢芽郎は注文書に記入した。
「私どもに依頼されたいご要件をお教えください」
「
「ご自宅に?」
「そうです」
「どちらですか?」
「ここから5500万光年離れた、おとめ座のM87銀河にある惑星です」
「んーっ……。お力になれません」
矢芽郎は深々と
「そんな事はないです!」
ムリリは矢芽郎の手を握った。小柄な姿から想像出来ないほどの力強さがあった。
「いいや、しかし。お宅に送り届ける科学力がありません」
矢芽郎はやんわりとムリリの手を離した。
「宇宙船はあるのです」
「え! じゃあ、何故?」
「船が小さいので、地球の外には出られるのですが、そこからは母船に乗せてもらわないと遠くまでは行けないのです」
「やはり、科学力がありませんのでお力になれません」
「実は母国の調査機関に勤めていたのですが、こちらへ来てからリストラされたのです」
「はい……」
「何度か職場に連絡をしたのですが、通信が遮断されているのです」
「はい……」
「ただ、家族との通信だけは
「はあ……」
「しかし、応答してくれないのです……」
「着信拒否をされていると言うことですか?」
「……はい」
「原因はわかっているんですか?」
「妻に浪費癖と浮気を疑われているんです」
「事実ではないのですか?」
「事実です」
「ダメじゃないですか?」
思わず、矢芽郎は突っ込んだ。
「すみません」
「いいえ、こちらこそ失礼しました」
「妻と連絡が取れるようになれば、そこから助けを求める事ができるんじゃないかと思うんです」
「そのお手伝いを私どもに依頼したい、と言うことですね?」
「はい!」
ムリリは満面の笑みをたたえた。
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