株式会社大喜利屋
ロックウェル・イワイ
第1話 宇宙人、現る
株式会社
小さな子供を二人抱えたシングルファーザーの
社長の
「
2LDKのアパートの居間では、慌ただしく朝の身支度ルーティンが行われていた。
「母ちゃんにチーンしてくる」
5才の菜乃花が和室に戻り、母の仏壇に手を合わせた。母の
8歳の兄と仲良く仏前に正座して、
「母ちゃん、行ってくるね」
「行ってくるね」
幸運な事に徒歩で10分のところに菜乃花の保育園があり、そのすぐ側に杉流の小学校も建っていた。
三人仲良く、通勤通学するのが日課だった。
目の前に金の卵保育園が現れた時に突然、背中から声を掛けられた。
「すみません」
振り向くと、小柄で頭がツルツルで目の大きい人物が立っていた。
「何ですか?」
矢芽郎は子供二人を背中に隠し、警戒した。
「あなたは神を信じますか?」
謎の人物は真っ直ぐな眼差しで訊いてきた。
「あなたはどうなんですか?」
少し、天然系な矢芽郎は何の戦略もなく聞き返した。
「いいや、あなたこそ、どうなんですか?」
謎の人物は聞き返されると思っていなかったのか、イラついた表情を浮かべていた。
「私は信じませんけど!」
二人の幼子を必死に守ろうとする矢芽郎には動じる理由などなかった。
「そうなんですか……」
「すみません、急いでるんで」
矢芽郎は子供達を自分の体で隠しながら立ち去ろうとした。
「わたし、他の
「え?」
薄々、普通の奴じゃないなと思っていたが、最も確率の低い答えを言われ、流石に矢芽郎も戸惑った。
「本当です」
「宇宙人、て事ですか?」
「そう言う事です」
「すみませんけど、急いでるんで失礼します」
とにかく、子供達だけでも無事に送り届けたかった。
「助けてください!」
「うわあぁ!」
宇宙人に袖口を掴まれ、矢芽郎はのけ反った。
「な、何ですか! ……もう」
矢芽郎は宇宙人の手を払い除けた。
「故郷に帰りたいのです……」
宇宙人のでかい瞳が心なしか潤んで見えた。
「わかりました。私の仕事は何でも屋です。相談に乗ります」
「良かった」
「その前に子供達を学校と保育園に送らせてください」
そう言って、矢芽郎は子供二人を抱きかかえ、走って逃げた。
菜乃花を保育園へ送り届け、杉流を小学校の校門で見送ったところで矢芽郎は一息ついた。
ホッとして、後ろを振り向くとさっきの宇宙人が笑顔で立っていた。
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