第50話 super cell

「ツバサの脳波に変化が生じています」



「私のだした超能力波が影響したか」



「ツバサの体温が42度を超えました」



「もしかしたら、super cellかもしれないな。バーチャルアーミー、空間歪曲衝撃波を放て」



バーチャルアーミーは空間歪曲衝撃波を放った。


それは周りのものを粉々にし、タイガ達に迫ってきた。


「うっ、うわっ!」


すると、衝撃波が直撃すると思ったその時、別の衝撃波がぶつかった。


衝撃波同士がぶつかり合った事でお互いに相殺した。


ツバサは無意識に空間を歪曲し、それを衝撃波に変えて放った。


タイガ達は何が何だか訳が分からず、声も出なかった。


「ツバサ、お前、一体?」


「いや、なんか分からないけど気が付いたら」


「おぉ!分からなくてもめっちゃすごいよ」


ツバサは突然手に入れた能力を駆使して、善戦した。


タイガ達はバーチャルアーミーを追い詰めた。



が、しかし、木々の中からバーチャルアーミーに似ているものがでてくる。



そいつは木に擬態していた。



「完全に挟み撃ちじゃん」


「くそっ、せっかく形成が逆転したって思ったのに」


「オマエラ、オモシロイ。マタ、アソボウ」


タイガ達はきょとんとした。


「もしかして、お前ら、俺らと友達になりたいのか?」


静かにうなずいた。


「おう!また会ったら遊ぼうぜ!」


「アリガトウ」


「スゴクウレシイ」


バーチャルアーミーの目が青白く光り、周りには幻想的な光景が現れた。


「わぁっ、きれいな海」


「あぁ、きれいだな」


「なんかものすごく気分が落ち着く」


「こいつはバーチャルアークの能力を少しだけ使えるんだ」



周りの景色が徐々に宇宙空間に変わっていった。


「うぉぉ、すっげぇぇぇ!」


「何これ?夢みたい」


タイガ達は興奮した。



すると、なにかがやってきた。


そいつは高校生のような容姿をしていた。


「あれっ、向こうに何かがいない?」


「ほんとだ、あいつ誰だろう?」


「私が夢魔(ムーマ)だ」


タイガ達は驚いた。


「夢魔(ムーマ)ってお前か?」


「高校生がこんな大掛かりなことしてんの?」


「この姿は私の本当の姿ではない。そして、この声も本当の声ではない」


「マジでお前、何者なんだよ?」


「そうだ、お前ら、現実の世界に帰りたいそうだな?」


「あぁ、その通りだ」


「ありがとう。君達から様々な貴重なデータを得る事ができた。君達は魅力的だ。だからこの世界にもう少しいてほしい」


「貴重なデータってなんか実験でもやってんの?」


タイガは不思議そうに聞いた。


「私が説明してよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


「ショウ、なんか知ってんのかよ?」


この世界は病気にかかっている人、事故にあった人、持てる者、持たざる者、ありとあらゆる人々が幸せに暮らせる楽園を創るための実験で創り出されたものだとショウは説明した。


「みんなが幸せになれる仮想世界を創る目的で実験してるのか」


「そうだ。俺はみんながいがみ合い、争い合うことなく幸せになれる世界が良いと思い、夢魔(ムーマ)のプロジェクトに参加したんだ」


「私達は苦しみや悲しみ、憎しみ、飢えのない世界を創り、人類を縛り付ける全てのものから人類を解放する、その理念を通して研究に励んでいる」


「ありがとう。お前らが怪しいやつらってことに変わりはないけど、でも、俺らがここまで成長できたのはお前らのおかげだ」


「まあ、実験は一定の成果を上げたってことだな」


「でも、俺達は現実の世界で頑張りたいんだ。もちろん、この世界は面白かった。でも、俺らはここにいるんじゃなくて、現実の世界に戻るべきだって思うんだ。それに現実の世界があってこそ、仮想世界が成り立つと思うんだ」


「何が言いたい?」


「仮想世界は人間が現実世界で活動し続けることで成り立つと思う。要するに人間はこれからも現実世界に居続けないといけないってこと」


「なかなか良い考えだな」


「だけど、この世界にほんのちょっとの間だけいてくれたら助かる」


「ほんのちょっとってどれくらい?」


「1~2年くらいかな」


「はぁ、嘘だろ?無理無理、そんなに長くはいられないよ」


タイガは思わず笑った。


「ハハハハハ、まぁ、そこまで帰りたいと言うのなら仕方がない。その代わりツバサと一緒に実験を行う」


「実験ってなんだよ?」


「まあ、それは見てのお楽しみだ」


夢魔(ムーマ)は得意げに言った。


「何の実験をやるの?」


「ツバサ、君の持っている力をぜひ、見せてもらいたい」


「力ってさっきの空間を曲げたやつ?」


「そうだ、空間を歪曲させるだけではなく、他の力も使えるはずだ」


「ねっ、ねぇ。思ってたんだけど、なんでよく分からない力が使えるようになったの?」


「それは君がsuper cellになったからだ」


「super cell?何それ?」


ツバサはとても不思議そうに聞いた。


「意思を持った細胞の集合体、つまり、君は宇宙みたいなものだ」


「それって私の細胞の1つ1つが意思を持っていて、私の中にたくさんの生命があるってこと?」


「その通りだ」

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