第46話 忍び寄る影
タイガとツバサは2人だけの時間を過ごした。
「俺もこの世界に残るよってセリフ、めっちゃかっこ良かった」
「えっ」
「ちょっと前にヒロとタカヒロに言ったやつ」
「おっ、おう。でもそんなにかっこいいか?」
「当たり前じゃん!2人の気持ちを素直に受け入れる姿はかっこいいに決まってる」
ツバサはとてつもなく爽やかな笑顔を見せた。
「いや、当然だよ。だって、2人の気持ちを考えないでさ、自分の考えばっか主張したんだ、悪者は俺の方なんだから」
「もう気にしないでいいよ」
ツバサは優しく背中をさすった。
「ありがとう」
「ヒロとタカヒロをホローしたのはこの世界に残って調べたい事があったからなんだ」
「それどういうこと?」
ツバサは夢魔(ムーマ)の異次元間航行機に乗り込んだ後、当機はハッキングして手に入れたものだと気づき、降りようとしたが、当機は機動し、異次元空間へと突入し、夢魔(ムーマ)の異次元間航行機と大ナチス帝国の宇宙船の戦闘に巻き込まれそうになったけど、どうにか戻ってきたと言うのを話した。
「まっ、まじかよ。それでその夢魔(ムーマ)の宇宙船っぽいやつはどんな形してたんだ?」
「上下対象でエンジンは見当たらなかった」
「俺らが思ってるのとはちょっと違うけど、逆にそこがリアルだな」
「ていうか、うちの話、信じんの?」
「お前は俺を全力で信じてる。だから、俺も全力でお前を信じる。それだけだ」
ツバサは何とも言えない不思議な気持ちに包まれた。
「ごめん。タイガは全力で信じてくれてるのに、どうせ正直に言っても笑われるだけとか、嘘だって相手にされないとかそんなことばかり考えてた。何かすごく恥ずかしい」
「いいんだ。気にすんなよ」
「人を信じて真正面から向き合うってとても美しいね」
「ツバサはとても素直でいいと思う。俺はいつも自分にとって都合のいいセイロンばかりに固執し、自分にとって都合の悪い正論からは目を背けていた。だからさ、これからは何事にも全力で向き合っていきたいんだ」
「めちゃくちゃ素敵!」
ツバサはタイガに思いっきり抱き着いた。
タイガも嬉しそうだった。
「そうそう、思ったんだけど、その大ナチス帝国っていうのは何だ?」
「大ナチス帝国は別の地球にできた帝国だよ」
「別の地球?なんじゃそりゃ?」
タイガは訳が分からず、あっけにとられた。
「世界は1つだけじゃなくて複数の世界が存在するんだけど」
「あっ、もしかしてパラレルワールドか?」
タイガはピンときた。
「その通り」
「へぇ~、パラレルワールドってほんとにあったんだ」
タイガはものすごくワクワクしていた。
「その別の地球は第二次世界大戦でナチスドイツが勝利し、その後、大日本帝国との覇権争いにも勝利したっていう歴史をたどってる」
「その地球はナチスが支配してるってことか」
「うん」
「俺、そんなパラレルワールドとかやだな、絶対無理」
「その別の世界のナチスはこっちの世界に攻め込もうとしてるみたい」
「ちょっ、ちょっと待て、それマジかよ?」
タイガはあまりにも突拍子もない事を言われたので思わず笑ってしまった。
「マジ」
ツバサは真剣な表情で言った。
「ナチスのやつらが攻めてくるのか、でも、俺らの地球はこれまでアメリカが主導権を握ってきて、向こうはナチスが主導権を握ったっていう所は違うけど、力の強いやつが弱い者を押さえつけ、力の強い者にとって都合の良いセイギをつくるって点は同じだな」
「確かにこの地球でも国同士のごたごたはいっぱいあるし、戦争とかも起きそうな感じだしね」
この星、地球では世界中の至る所で排他的経済圏が誕生した。
ネオアメリカは中国に対抗するため周辺諸国を巻き込み、排他的経済圏を構築した、ヨーロッパでは移民や機械人にどう向き合うかで争いが頻繁に起こる、中東ではアメリカが中東への影響力を失った事で混乱が急速に加速してしまい、争いが頻繁に起こるといった出来事が起こり、世界はきな臭さを増していった。
分断、不信が誕生し、信頼が消えてしまった。
国境を越えた人と人との繋がりは薄れ、再びお互いの違いを理由にしてそれぞれが孤立していった。
人々はお互いの違いを認め合う事を忘れつつあった。
「戦争はお互いに人がたくさん死ぬだけなのになんで戦争なんてやるんだろうなぁ、国にもいろいろ事情があるとは思うんだけどさ、話し合えば確実に良い形で解決できると思うぜ。話し合えばお互いに幸せになれるはずなんだけどなぁ」
タイガはため息をついた。
「そうだね、最近は機械を通して思念で人を殺せるようになったし、なんかほんとに怖い」
「やべぇじゃん」
「そういえば、戦争や人殺しをノリノリですすめるような歌とかも流行ったりして、おばあちゃんがとてつもなくおびえてたなぁ」
「なんかすっごく怖いな」
「うん、この先どうなるんだろう」
地球には恐ろしい影が忍び寄っている。
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