第40話 仲間割れ

「バーチャルアークってどこにあるのかな?」


「さあ、たぶんこの近くとかにあると思うぜ」


「そもそも、バーチャルアークってものなのかな」


「まあ、そういわれればそうだな」


「あっ、ちょっといい?」


「おう、どうした?」


タカヒロがタイガに話しかけた。


「これから先どうする?」


「これから先って将来の事か?」


「いや、バーチャルアーク見つけたらどうするのって話だけど」


「そりゃあ、元の世界に帰るに決まってんだろ」


「か、帰るの?」


タカヒロはとても残念そうだった。



「逆に聞くけど、帰らねぇの?」


「だって、この世界はとても面白いし、それにいろんな面白いアトラクションとかもいっぱいあるし、もっといろいろ得られると思うんだ」


「そりゃあ、俺もこの世界はけっこう面白いと思うけど。でも、俺らが元々いた場所はここじゃないだろ?」


タイガは真剣な顔つきになった。


「それはそうだけど、もしかして、帰るためだけに旅を続けてたの?」


「はっ、当たり前だろ!それ以外に何があるって言うんだよ?そりゃあ、バーチャルアークを使っていろいろ試したりとかはやりたいけどよ」


「で、でももうちょっとの間だけこの世界にいるっていうのも」


「なんでお前はこの世界にこだわるんだよ?」


「だってこの世界は面白いし、この世界の謎とかを解きたいんだ」


「別にこの世界を知ったって、なんもならねえだろ?それに俺らはここじゃなくて現実の世界で頑張るべきだぜ!」


「で、でも、この世界で学べることもたくさんあると思うし、それに現実の世界はつまらなくて退屈だし、やなことばっかりだと思うし」


タカヒロは自信なさそうな感じで言った。


「あっ!?」


タイガはとてつもなくいらだっていた。



「なんていうか、当分とは言わないけれど、もうちょっとこの世界に居続けるのもありだと思う」


「あぁっ、そうかよ!だったら、お前は一生、この世界に引きこもってろよ!」


タカヒロは激しく動揺する。


「ちょっと、タイガ!」


ツバサは止めようとした。


「あっ、そういえば、タカヒロは引きこもりだったときがあったな」


「それは言うな」


「あっ、いや、ご、ごめん。何でもない、気にしないで」


ヒロはとてつもなく申し訳なさそうな感じだった。


「ひどいよ」


タカヒロは激しく泣きながらタイガに迫った。



ヒロはタカヒロの声を聞いて言葉では言い表せないくらい傷ついていることを察した。


「あっ!?」


タイガはそんなタカヒロを威圧したが、タイガもどこか動揺していた。


「今のはひどいと思う」


ヒロは真剣な表情で臨んだ。


「はぁっ、何が言いたいんだよ?」


「確かにタイガの言うのは正論だと思うけど、今のはさすがにないと思う」


「へっ、お前に何がわかんだよ?つーか、お前はなんも関係ないだろ?」


タイガは喧嘩を売るような口調で迫った。


「関係あるよ。だってタカヒロとは親友だもん」


「チッ」


タイガはとても不満そうに舌打ちした。


ヒロは何か言いたそうだった。


「言いたいことあんなら言えよ」


「なんていうか、その高圧的っていうか、威張った感じがちょっと嫌なんだ」


「ああっ!?なんだよ?」


「いじめっ子と同じじゃんか」


「ほぉっ、なんか不満でもあんのかよ?」


タイガはくだけた口調でバカにしたような感じで迫った。


ツバサは2人のことをホローした。


「お前もこの世界にこだわってんのかよ?」


「別にこだわってるとかそーいうんじゃなくて、なんていうか、その」


ツバサはしどろもどろに言った。


「俺、はっきりしないの嫌いなんだよ」


タイガは怒鳴った。


「タイガの気持ちは分かるけど、2人の気持ちを無下にするのは間違ってる」


タイガは一瞬、申し訳なさそうな顔をした。


「でもよ、ああでも言わねえと聞かねえだろ」


「あの言い方はひどすぎる。タカヒロやヒロはどんな気持ちだったと思う?」


こうして、2人は口論になり、ツバサは暗そうな表情で去っていき、川に向かって石を激しく投げつけた。


ツバサは跳ね返った水でびしょぬれになった。


タイガは複雑な気持ちだった。


「おい、ツバサにまで八つ当たりすることないだろ!」


タイガはヒロを殴ろうとしたが、踏みとどまり、ヒロを手で突き飛ばした。


心の中に暗い影を落としたまま、タイガ達は眠りについた。


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