第38話 神秘の記憶
宮殿の中に入ると自分自身の人生が映し出され、壁には映画のポスターみたいなものに自分自身の人生で印象に残った出来事が描かれていた。
虎と豚が肩を組む、狐と豚が遊ぶ、不気味なトカゲみたいなものと豚が肩を組むと言った写真もあった。
さらに奥へと進むと上下が分からない空間が広がっていた。
「また、これか」
「なんか吐き気がしそう」
妙な空間を抜けるとそこには若干、ぼんやりとした景色が広がっていた。
「あっ、リトルツバサだ」
ツバサの目の前に幼い頃のツバサがいた。
お風呂から上がると着替えずに裸で走り回るリトルツバサを見て、父は顔を隠し、母はそんなリトルツバサを赤ちゃん言葉で挑発した。
「あれ~、その年になって自分でお着替えもできないんでちゅか~?」
リトルツバサは慌てて、着替えに行った。
その様子を見て、ツバサは大笑いした。
母親に何で小さい頃はラッコって呼んでたの?と聞いたら、しょっちゅう、裸で走り回ってたから、裸子(ラッコ)って呼んだといたずらっぽく言われたのも思い出した。
すると、周りが水に覆われていき、そこにはイルカがいた。
リトルツバサがイルカと遊ぶ姿が映し出された。
ところが、イルカは巨乳のお姉さんがやってくるとそのお姉さんの方へ行き、べたべたとじゃれ合った。
リトルツバサは残念そうにしていた。
「なんかめっちゃなつい」
すると、ツバサの所に一枚の写真が現れた。
それは家族3人で口を大きく開けたシロイルカと一緒に写っている写真だった。
その写真を見て、ツバサはプッと笑った。
早朝、他人の家に駆けこんで友達を起こして走り回ったり、シロイルカみたいな姿をしたガベルと名乗る人型生命体と一緒に過ごしたり、友達の家のお風呂に入ってはしゃいだ、学芸会で勇者役をやり、黒騎士と戦った等の輝かしく美しい光景が次々と映し出された。
そこには幼稚園の頃、ある女子の友達の家に遊びに行った時、その家のお風呂に入った後、その子の母がリトルツバサの下半身を見て、男子にあるはずのものがないことに気付き、リトルツバサは驚いた顔で女の子なの?と聞かれ、うん、だってそんなチンケなものついてないもんと自信満々に答えたほほえましいような恥ずかしいような出来事も映し出されていた。
ツバサは苦笑いした。
タイガの目の前には兄とキャンプに行った時の出来事が映し出された。
「シン、無理すんなって」
「るせぇな、俺に任せとけよ」
タイガの兄はサッカーの試合でけがを負っていたが、タイガの分の荷物も頑張って持った。
すると、キャンプ場で兄と一緒に立小便をしたことも映し出された。
タイガはゲラゲラと笑った。
すると、兄と過ごした思い出の日々が次から次へと映し出された。
兄と一緒に祭りを見に行った時、ふんどし姿の女性を見てゲラゲラと笑った、兄と一緒に遊園地に行った、兄に勉強を教えてもらった、兄と一緒に映画を観たり、テレビゲームをやった、兄と一緒にコミケに行った等の出来事が目の前に現れた。
「遊園地に行った時、兄貴のやつ絶叫系はめっちゃ苦手なくせに俺と一緒に乗ってくれたもんなぁ、兄貴のやつなんやかんやで良いやつだよな」
タイガは兄に対して、感謝の気持ちが湧いてきた。
タイガがお菓子を投げつけられている浮浪者を助ける、小学校の頃、居残り授業を受けている時にタケシと出会った事も映し出されていた。
父や母と過ごした思い出もでてきた。
その中には父がタイガに勉強を教えるために母にガミガミ言われながら頑張っている父の姿があった。
「すまん、空間把握の問題だけはどうしても理解できないんだ」
父はあまりの辛さに男泣きしてしまった。
「あんたが勉強してないからだろ」
「親父、すまねぇ。俺がふがいないばかりに」
タイガもうるうるときていた。
ヒロの目の前には父に手淫している所を見られて、わぁっと叫んだ思い出が映し出された。
「ヒロのやつ、せんずりをかきおって(心の声)」
父は静かに笑いながらヒロをジーと見ていた。
ヒロはそれに気づくとわぁっと叫んだ。
「あの時は恥ずかしかったなぁ(心の声)」
タカヒロと過ごした日々やいじめられている時、タイガに助けられたことも映し出された。
ヒロは部室のものを壊してしまった時のことを思い出し、その時は真っ先にタイガが疑われ、先生に叱られてしまったため、あの時は本当に申し訳ないことをしたと後悔し、反省した。
タカヒロはヒロと過ごした日々を見て、心温まるものを感じた。
ツメオは親友と過ごした日々を見ていた。
そこには舌で鼻をほじれるかというのを試した、落し物の箱にある女子のパンツをこっそりと持ち出し、においをかいで頭にかぶった、一緒にふんどし姿のアイドルの踊りを観に行った等が映し出された。
機械の体で生きている人との交流も映し出された。
機械の体で生きている人にスポーツとか勉強とかが楽そうだから機械の体になりたいと言ったら、人生は楽ばかりじゃないと叱られた。
「あの人がいじめられているのに助けず、見て見ぬふりをして情けないなぁ」
その機械の人を助けなかったことをツメオは悔いた。
最後に部屋の中で裸で太鼓をたたく真似をするツメオが映し出された。
ツメオは思わず笑ってしまった。
タケシの目の前にツバサやタイガと過ごした日々が映し出された。
「最初、ツバサと会った時、男子かなって思ったし、行動とかも男子とほとんど変わらなかったから気兼ねなく接してたなぁ、女の子って分かった時、めっちゃ驚いた(心の声)」
母の事を紹介したり、泥んこになった服を見て、ママに笑われると落ち込んでいるリトルツバサを見て、タケシはリトルツバサがママとも友達みたいに接した事を思い出す。
「ケチだけど、すごく良いやつだよとか言って、ママとも友達みたいな感じで接してたっけ」
タケシが見た思い出はかなりぼやけていたけれど、優しく包み込むような逆光、爽やかな風、心がほかほかするような温かみを感じた。
こうして、タイガ達はどっちが上か下かも分からない空間をさまよい、合流した。
すると、一枚の紙があった。
そこにはこう書かれていた。
ここを出たければ解読せよ、と。
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