第36話 夢魔の記憶

映像にはビッグバンによる宇宙の誕生、地球が歩んできた歴史、エイリアンによる人類創生、地球上に大規模な文明を築いた人々、エイリアンの覇権争いに巻き込まれる人々、生き残った人々が地球上に散らばっていく、その人々が再び文明を築き始める、それから紆余曲折を経て今に至ると言ったのが映し出されていた。



「なんだ、これ?」


「私の脳内に入っている記憶だ」


「こ、これがお前の記憶か!?」


「そうだ」


「も、もしかしてお前、宇宙人?」


「宇宙人ではない」


「ってことはサイバー生命体?」


「サイバー生命体ってなに?」


ツバサはきょとんとした顔で聞いてきた。


「コンピューターに意識や記憶を転送して、データ化する事で生き続ける生命体だよ」


「なるほど、電脳生命体ってことか」


「そういうこと」


「私はコンピューターと共に生きている生命体ではない。むしろ、コンピューターを支配している。この世界を創っているコンピューターのプログラムも私の意志に基づいている」


「意識を通してコンピューターを支配してるってことか」


「まあそんなとこだ」


「分かった。機械人だろ?」


「違う」


「でも、機械に接続してるんだろ?」


「私は機械に頼って生きる下劣な存在ではない」


「おい、いくら体が機械でも心を持って生きてることには変わりないだろ!謝れ!」


「はいはい、すいませんでした」


「つーか、お前、一体、何者なんだよ?」


「自分でも自分自身が何者かと言う事が分からないんだ。まあ、一言で言うなら私は未確認知的生物ってとこかな」


「ケッ!」


「でも、この記憶ってほんとの記憶なの?だって超古代文明みたいなのがでてきてたし」


「ムー帝国みたいなやつ」


「あぁ、あの一夜にして海の底に沈んでしまった帝国のことか」


「ショウ、そういうのに詳しいの?」


「いや、別に詳しいってわけじゃないけど」


「でも、ムーとかアトランティスは本当にあったと思う」


「なんで?」


「うちの弟がゼウスがアトランティス帝国を洪水で海に沈めた、アダムとイブが蛇に誘惑されて禁断の果実を食べて、楽園を追放されてしまったと言うのに似ている話が世界中のありとあらゆる場所で言い伝えられているし、共通する部分がある神話もあるから有史以前に広大な領域を統治していた文明があったかもしれないって言ってたんだ」


「ゼウスって言ったら浮気ばっかりしてた神様のことか」


「そうそう、良く知ってるね」


「おい!」


タイガが睨んだ。


「ごめん、話をそらしちゃった」


「そういえば沖縄の周辺の島々に神様が傲慢な人間に天罰を与え、天変地異を起こしたって言う話やアダムとイブが楽園を追放されたって言うのに似てる言い伝えがあるって聞いたことある」


「ニライカナイの伝説とかもあるしな」


「沖縄はムーやアトランティスと大きく関係してるかもね」


「そのムーとかアトランティスとかがきっと今のうちらの祖先だよ」


「なんでわかんだよ?」


「ピラミッドってあるじゃん」


「おう」


「そのピラミッドはエジプトだけじゃなくて世界中のあちこちからピラミッドに似てるのが発見されてるんだ」


「日本にもピラミッドっぽいやつがあるって聞くけど」


「そうそう」


ツバサはノリノリに話していった。


「イギリスのストーンヘンジって知ってる?」


「うん」


「ストーンサークルだろ?」


「そのストーンサークル的なやつがイギリスだけじゃなくて他の国からも発見されてるんだ」


「マジ!?」


ツバサは嬉しそうな表情で驚いた。


「あと1つものすごい情報があるんだ」


「えっ、なになに?」


ツバサはとてつもなく興味津々だった。


「シーサーって言うのは沖縄の守り神なんだけど、そのシーサーは中国の獅子からきたものなんだ」


「そうなんだ」


「その獅子はエジプトのスフィンクスが元になっていて、シルクロードを通じて中国に広まっていったんだ」


「エジプトって言ったらあのピラミッドで有名な国。ここでもつながってくるのか」


「うん、とてつもなく不思議だね」


「やっぱり沖縄には超古代文明があったかも」


「沖縄はどこか日本じゃないような」


「日本っていうか、中国っていうか」


「日本っぽい感じもするし、中国っぽい感じもするってこと?」


「そうそう」


「確かに中国の福建省の神様が祀られている所とかがあるんだ」


「沖縄にめっちゃ詳しいじゃん」


「まあな、俺、沖縄に行ってみたいんだよ。だから、沖縄のことは沖縄マスターであるこの俺に任せろ!」


「なにかめっちゃ頼もしそう」


「へっ」


「やっぱり沖縄って中国の影響を強く受けてるって感じなの?」


「そうだ!沖縄には昔、チャイナタウンがあって、中国人がいっぱい住んでたんだぜ」


「ほんとに?」


「ほんとさ」


「首里城とかも中国っぽい龍がいっぱいいるだろ」


「確かに」


「なんていうか、首里城って中国独特のふいんきをめちゃくちゃ放ってるよね」


「そうだね」


「沖縄の文化は中国の影響を強く受けたのか」


「ってことは沖縄は中国ってこと?」


「それは違うな、沖縄は日本古来の文化からも影響を受けてるんだ」


タイガは得意げだった。


「日本古来の文化?というと?」


「沖縄は昔から神道や皇室と関わってきた歴史があるんだ」


「沖縄には日本の心が根付いてるってことか」


「おう」


「まぁ、日本は日本古来の文化と外国から来た文化を融合させて発展してきたからその点では日本と沖縄は同じだな」


「そうだね、古来からある文化だけじゃなくて、他の所から取り入れた文化とかも合わさってるから本土と沖縄は魅力的な感じ」


「その通りだ」


「でも、本土と沖縄ってなんか仲悪そうな感じだけど」


ツメオは深刻そうに言った。


「沖縄にはいろんな嫌な事押し付けちゃったし、沖縄戦でもいっぱい迷惑かけたからな」


「どちらも仲良くした方がいいと思うけど」


「あぁ、沖縄の歴史を語る上で日本と中国は欠かせないからどっちとも仲良くした方がいいよな」


「沖縄は日本や中国と関わってきたことで発展してきたってことか」


「なるほど」


「っていうか、また話がそれてる」


「あっ、そうだった!エジプト、中国、沖縄には共通した文化があったって話だったよな」


「うん」


「エジプト、中国、沖縄に共通した文化があるってなんか不思議だね。もしかしたらもともと、エジプト、中国、沖縄はなにかしらの繋がりがあったと思う」


「僕らは1つの大きな意識の中でお互いに繋がってたのかもね」


「それだ!たぶん俺らはもともと一つでそこからいろんな所に散らばっていって、それぞれでいろんな文化を吸収し、交流し合って、今の世界になったんだ」


「なんかありえるかも」


「だろ」


「つまり、映像はほんとってことか」


「この記憶には宇宙に関する事やうちらが生きてる世界の全てが入ってる」


「この世界は記憶でできてるだろ?」


「うん、そうだよ」


「ってことは夢魔(ムーマ)の記憶を使えばなんでもできるし、この世界を創っているコンピューターは夢魔(ムーマ)の意志で動いている」


タイガはニヤリと笑った。


「あっ、そういうことか」


ツバサはとてもスッキリしたような顔で笑った。


「バーチャルアークの正体は夢魔(ムーマ)の脳内だ」



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