第34話 心

 宝石のごとくきれいな海、心を洗う水しぶき、それは美しさと言うものを表していた。


「きれいだな」


「空気もとてもきれい」


「清々しくてとても爽やかだし、風がとても気持ち〜」


「空の色も鮮やかできれいだし、太陽の光の差し込み具合もちょうど良い感じ」


「そうだな」


「何かものすごく癒される」


「苦労してきたかいがあったね」


「おう」


「ああ、この音、すごく良い感じ!自然と落ち着ける」


タイガ達は海で水遊びをする事にした。


「にしてもこのゆらゆらときらめいている感じとこの水しぶき、なんだか生き物みたい」


「あぁ、海も生き物だぜ」



すると、誰かがやってきた。



スネークだ。



「もしかして、お前、スネークか?」


「そうだよ。久しぶりだな」


スネークはタケシ、ツバサ、タイガ、ツメオに謝り、昔の事をいろいろと話した。


「前のスネークより今のスネークの方が良いと思うし、今のスネークが人として好きだからこれからもよろしく!」


「やめろよ、ツメオ。照れるじゃねえか。俺の方こそよろしくな」


ツメオとは友情を深めていった。



 スネークが中学生だった頃、タバコをスパスパと吸い、気に入らないやつには額の方にタバコの火をつけた部分を押し付けたりしていた。


そんなある日、スネークは持ち物検査で学校にナイフを持ち込んでいた事がばれてしまう。


その事がきっかけで厳しい女性の教師にいろいろと指導を受けてもらい、スネークは素直に言う事を聞き、少しずつ変わっていった。


スネークはボランティア活動で子供、老人、体が不自由な人と言った様々な人やいろんな動物と関わり、ありとあらゆる生命の営みを学び、どんな生き物も心を持って生きていると実感した。


そして、自分自身が犯した罪を深く反省し、後悔した。


スネークは小学生の頃、幼稚園生の頃から可愛がっていた近所の野良犬や野良猫にエサをあげたり、一緒に遊んでいたが、ある日、その野良犬や野良猫の様子がどこか変だった。


よく見て見るとそれは病気だった。


すると、頭の中に謎の声が聞こえてきた。


その声の言うがままに動物達を治療した。


しかし、動物達が息を吹き返す事はなかった。


一瞬、スネークの頭の中は真っ白になった。


スネークの頭の中は疑問で覆いつくされ、なぜだ?なぜだ?と問いかけ、状況を把握する事すらもままならなかった。


動物達を再び蘇らせる方法がある、謎の声の主はそう言った。


スネークは一心不乱にその声の言うがままに作業を行った。


動物達は確かに息を吹き返した。


だが、それはスネークの知っている動物達ではなかった、スネークが日頃から直に触れあっている動物達の姿はそこにはなかった。


それは人間が使う言葉を喋りだした。


そいつは徐々にこの世のものとは思えない姿へと変わっていった。


何が起こっているんだ?といった疑問がスネークの脳内を激しくかき回し、疑問以外の感情は何一つ湧き上がってこなかった。


その時、お前の望みをかなえただけだ、動物達はとてつもなく可愛い、にも関わらず、なぜ知性を持たない、なぜ下等なんだ、俺ら人間と同じように知性を持てば良いのにとお前はいつも願っていたではないか、との声がスネークの頭の中に入ってきた。


スネークは複雑な気分だった。


スネークは突然の不可解な出来事に戸惑いつつも、どこか嬉しさを感じていた。


そいつの様子がどこか妙だった。


スネークは気になって見て見ると、そいつは突然、襲い掛かってきた。


スネークは咄嗟に持っていたナイフで刺してしまった。


そいつはもがくように暴れ狂った。


その動きは徐々に遅くなっていった。


そして、動きは止まってしまった。


そいつは静かに目を閉じ、動かなくなってしまった。


さっきまでは活発に体温を出していたそいつの体は冷たくなっていた。


ハハハハハハハハとスネークの頭の中で笑い声が響いた。


ナイフを持って静かに立っている少年の心には何かが壊れ、何かが生まれた。


少年の心にはありとあらゆる怒り、そして、生き物に対し、邪な考えを抱いてしまった事への後悔、取り返しのつかない事をしてしまったという事実に対する絶望が支配した。


その感情は今もなおスネークの心を縛り付けていた。


1日も欠かさず、殺めていった生き物達に祈りを捧げている。


ツバサはスネークの話を聞いて、自分もシンナー中毒で半身不随になった人の世話をしたり、体が不自由な子を励ました事を思い出す。


ツバサは大いに共感した。


「今、調子はどう?」


「まあ、ぼちぼちかな」


「良かった」


「スネークは今、何かやってることとかあんの?」


「料理教室でアルバイトやってるんだ」


「料理とか得意なの?」


「まあな」


「いいなー。今度、時間あったら教えてよ」


ツバサは顔を近づけて迫った。


ツバサは料理に興味を持っていて、最近、普及してきた昆虫食に関する事も知りたかった。


「あぁ、いいぜ」


タイガは羨ましそうに見ていた。


ツバサは料理についてスネークにどんどん聞き、ボランティアに関する話もした。


「ツバサも体の不自由な子と触れ合ってたんだ」


ツバサの通っていた小学校には健常児が通うクラスと体の不自由な子が通うクラスが別々に分かれていた。


体が不自由な子が通うクラスにはあそこに近づいたら病気がうつると言うデマが広がったせいで近づくものがあまりいなかった。


しかし、ツバサは積極的にそのクラスに遊びに行った。


そのクラスにいる子も優しさと思いやりを持っていたので体が不自由と言う点を除けば他の子と異なる点はなかった。


スネークはツバサの話を聞いて、複雑な気分になった。


スネークは料理教室のアルバイトで包丁で肉を切る時に生き物をナイフで刺し殺した事を思い出し、体が押し潰されそうな感覚に陥り、体中から汗が出るというのに悩まされていた。


「さっきのやつ、めっちゃ良かったぜ!」


「さっきのやつって何だよ?」


「記憶の中の俺を助けただろ」


「お前、あれ見てたのかよ?」


「あぁ」


「もしかして、お前、この世界のありとあらゆる場所を自由自在に見れるのか?」


タイガは目をまん丸くしていた。


「いや、俺は自分の記憶を元にしてできたエリアしか見れないんだ」


「そっか、ってゆーか何でお前はこの世界にいるんだよ?」


「夢魔(ムーマ)からある事を頼まれたんだ」


「ある事って何だよ?」


「ごめん、それはいろいろと事情があって今は言えないんだ」


スネークは申し訳なさそうに言った。


タイガは顔を近づけて問い詰めた。


「何だよ、別に今、話したって良いだろ?」


「そうしたいけど、いろいろ事情があって、できないんだ。まあ、企業秘密っていうか」


「チッ、ますます気になるぜ」


「それに今、話すとネタバレみたいな感じになって面白くなくなるだろ?これから先の冒険で謎を解く鍵はどんどん出てくると思うし、自分で答えを探した方が面白いと思うぜ」


「まあ、それもそうだな!」


「ところで、気になってた事があるんだけどさ」


ツバサがスネークに聞いた。


「何だよ?」


「スネークの名前って言うか、スネークの本名って何?」


「俺の名前はショウって言うんだ。忘れたのかよ?」


「ごめん」


「お前、ショウって名前なんだ。初めて知った」


「じゃあさ、じゃあさ、ショウくんって呼んで良い?」


ツバサはニヤニヤ笑いながら接してきた。


「くんって付けるのはちょっとな」


ショウは苦笑いした。


「じゃあ、ショウちゃんって言うのはどう?」


「絶対、ダメだ」


ショウはきつく言い放った。


「冗談だよ」


「ショウでいいよね」


「おう」


「よろしく!」


「こちらこそよろしく!」


「そろそろ、神秘の記憶につながる扉を探すか」


「その扉ってどこにあるの?」


「どこにあるかは分からないけど、この近くにあると思うぜ」



タイガ達が扉を探して歩いているとワンダーバードが何かを見つけた。


「ここに扉みたいなものがあるよ」


空に扉があった。


「サンキュー!ワンダーバード」


タイガは頭の中で階段を想像して扉の前に出した。


タイガ達は扉を開けた。


扉の中に入った瞬間、下に向かってとても強い風が吹き、タイガ達は地面に落ちそうになった。


「あっ、あああああああ!」



















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