第31話 闇(前編)
タイガ達は喧嘩を止めようとしていた。
その頃、記憶の中のタイガとスネークは一進一退の攻防を繰り広げていた。
タイガとスネークの背後にはモヤのようなものが出てきた。
「あれ、何か黒いのがでてきてない?」
「ほんとだ」
そのモヤのようなものは徐々にはっきりしていった。
「あっ、タイガの後ろにいるのは虎で、スネークの後ろにいるのは蛇か」
ツバサは目をまん丸くして見ていた。
「何か守護霊みたいだな」
「それにしては何かよどんでるような」
タイガは勢いよく腹に拳を入れようとするが、スネークに見切られてしまう。
そして、スネークの足に蹴りを入れようとするが、またスネークに見切られてしまい、攻撃をはじかれてしまう。
「へっ、動きが単純なんだよ」
暴れ狂うタイガをスネークは嘲笑う。
しかし、タイガは怯まずに素早く手をスネークの頭上に持っていき、両手を使い、スネークの頭の方に強烈な一撃を当てた。
スネークは頭の方にものすごい衝撃を感じた。
スネークの視界が一瞬、真っ暗になった。
そして、周りがぼやけていった。
周りの景色がぐらついた。
スネークの視界は下の方に落ちていった。
ふらつく体を止める事ができなかった。
スネークはその場でフラフラと倒れてしまった。
「蛇は頭が弱点だって聞いたけど本当なんだな」
タイガは嫌らしい口調で言い放った。
「クソッ」
スネークは起き上がろうとしたが、体に力が入らなかった。
「へっ、クソはお前だ。喧嘩ってもんはな、一発で決めるもんなんだよ」
タイガの後ろにいる影のようなものはますます勢いよく暴れ出し、スネークの後ろにいる影のようなものはのたうち回るような動きをした。
ヒロは2人の後ろにいる影のようなものを見て、何かに気づいた。
「ヒロ、どうしたんだよ?」
「あの影みたいなのは2人の気持ちを表してるんだと思う」
「確かに。あの虎の影はどこか嬉しそうな感じだな」
「でも、すごく怖そう」
タカヒロはタイガの後ろにいる影のようなものから狂気や底知れぬ恐怖を感じた。
「まあな。暴れ狂っていて、ひたすら血を求めてるって感じでまさに血に飢えた獣だな」
タイガは嬉しそうだった。
「スネークがかわいそう」
「スネークは悪い奴だろ、なに同情してんだよ」
タイガは不機嫌そうに言った。
タイガはどこか戸惑っていた。
「だけど」
ツバサはスネークを助けるようお願いするような感じでタイガを見た。
「でも、ちょっとやり過ぎたな」
タイガは思い詰めたような顔をした。
一方、スネークはタイガに対し、苦しそうにもがきながら挑発していた。
「なんだよ、その態度は?少しはこの俺に感謝したらどうだ?」
「はぁっ!?聞こえねぇな!」
タイガの顔つきはさらに恐ろしくなり、さらに力強く、殴る蹴るを繰り返した。
「何か、めっちゃ怖い」
タカヒロはドン引きしていた。
「これ以上やるのはまずいよ」
タケシは喧嘩を止めるために急いで走った。
「そうだね」
「仕方ねぇ、止めに行くか」
「うん」
タイガ、ツバサ、ツメオも走り出した。
ヒロとタカヒロも彼らについて行った。
すると、スネークの後ろにいる蛇のようなものが口からドス黒い煙をはいた。
その煙は徐々に人の姿へと変わっていった。
「あれっ?もしかしてツメオ?」
「ほんとだ」
「でも、あれは煙じゃないの?」
「どう見てもツメオだな」
「記憶の中のツメオは向こうで決闘を見てるはずなのになんでここに?」
タイガ達は突然の出来事に何が何だか訳がわからなかった。
すると、ツメオらしきものは獰猛そうなトカゲみたいな生き物に姿を変えた。
「な、なんだありゃあ?」
「ど、どういうこと?」
タイガ達はますます訳が分からなくなり、戸惑っていた。
「め、めっちゃ怖い」
「ツメオ、自分自身に何を恐怖感じてんだよ」
タイガは呆れていた。
「図鑑とかで見た恐竜人間みたい」
ヒロは興味津々だった。
「ツメオは別に化け物とかじゃないし、あれは一体何なんだ?」
タケシは不思議そうに考えていた。
「ツメオみたいなものはあの影のようなものから出てきた、あの影のようなものは心の邪悪な部分が表れたもの(心の声)」
ツバサはパチンと勢いよく指を鳴らした。
「どうしたんだよ?」
「あれはツメオの心のドス黒い部分だよ」
ツバサは例のものに指を差して言った。
「ツメオの心のドス黒い部分か」
「そう、あの蛇のようなものはスネークの心のドス黒いものが表れた感じじゃん、だから、ツメオと割とよくつるんでたスネークは心のドス黒い所でツメオの醜い所を感じ取って、それを熟知し、利用できるんだ」
「スネークが感じ取ったツメオのゲスい部分が表れてるってことか」
「そういうこと」
ツメオは昔の醜く荒んだ自分自身の心をえぐられ、なじられ、弱さを上手い具合に利用されたと言う事に何とも言えない複雑な感情を抱いていた。
「始末してくるよ」
ツメオは過去の自分そのものと対決する事にした。
「あっ、ちょっと!?」
「まあ、テメェのケツはテメェでふけって言うしよ、いかせてやろうぜ」
ところが、その異形の存在は大地を震え上がらせるような叫び声を突然、上げた。
ツメオは怯んでしまい、即座に逃げてしまった。
「ケッ」
タイガはツメオを軽蔑の眼差しで見た。
「ご、ごめん」
ツメオは自信なさそうにタイガを見た。
「よせよ、一応、ツメオなりに頑張ったんだからさ」
ツバサはツメオをホローした。
嬉しそうにツバサを見るツメオに対し、ツバサは苦笑いした。
そして、異形の存在はタケシの方に迫ってきた。
そいつはニヤッと笑った。
タケシは突然、体が固まっていくような感覚に襲われた。
「な、なんなんだこの感じは?(心の声)」
攻撃もしていないのに何もできないもどかしさや目の前の存在に対する恐怖と言った様々な気持ちの間で葛藤を感じ、タケシは押し潰されそうになった。
それでも、怯まなかった。
すかさず、指を差した。
「どけ!」
「おぉ!」
みんなは感心していた。
異形の存在はペロッと舌を出し、口の周りをなめた。
舌をベロベロと出し続け、挑発した。
「キモっ!」
そして、異形の存在はタケシに高圧的に迫り、手を頭の上に置いた。
「おやおや、この俺にそんな態度を取って良いのかな?」
「な、なんだよ?あ、あれっ!?ここは?」
突然、タケシの目の前の景色が変わった。
そこにはスネークとツメオがいた。
「スネークとツメオ?」
スネークはニヤッと笑い、タケシに話しかけてきた。
「おい、タケシ。よくも嘘を先公にちくったな!」
スネークはとてつもなく高圧的な感じで話しかけられただけで体がむず痒くなる程の恐怖を感じた。
タケシはこの空間から何か妙なものを他にも感じていた。
「な、なんなんだ?この感じは。そう言えばここは何だか生臭さが漂ってるな(心の声)」
「な、なんのこと?」
タケシは告げ口した事は一度もなかった。
「とぼけんなよ。タイガの奴が俺に突っかかったのはタケシをいじめたからだって言ったんだろ?先公によぉ!」
声の一つ一つにドスが効いていて、震えが絶え間なく襲いかかってきた。
「言ってないよ」
「嘘つけ!お前が言ったんだろ?正直に言えよ!なぁ、ツメオ?」
「はい、タケシが先生にちくってる所を見ちゃいました」
ツメオは便乗してニタニタと笑っていた。
「こいつがそう言ってるんだぜ。いい加減認めろよ」
スネークは凍りつかせるような感じで小声で言った。
タケシは今にも倒れそうな感覚に陥った。
「違う。言ったのは僕じゃない」
「まさか、こいつが嘘を言ってるとでも言うつもりか?」
「でも、ほんとに僕は言ってないよ。言った覚えはない」
「ほぉ、嘘つきの分際でその上、罪を認めないとはな」
「ほんとですよね。スネーク様」
「それによ、いつ俺達がお前を虐めたって言うんだ?後、聞いたぜ。タイガに宿題の答え見せるよう言われてるんだってな。虐めてるのはタイガの方なんじゃあないか?」
「大事なのは日頃の信頼関係だよ。まぁ、もし仮に君が虐められていたとしてもだ〜れも助けてくれないと思うけど」
スネークとツメオは通り過ぎて行った。
その時、スネークはタケシの耳元に囁いた。
「嘘つきは嫌われちゃうよ。タケシく〜ん」
とてつもない恐怖やトラウマ、悔しさにタケシは泣き出してしまった。
ツバサはそんなタケシを見て、かけつけて励ました。
「この声はツバサの声(心の声)」
タケシは周りが温かくなっていくのを感じた。
「何だ、この感じ!すごく気持ち良い!(心の声)」
「お前らの信頼は信頼じゃない!ただお互いに利用しあってるだけだ!欲望を満たすだけのためにつるんでる、そんなつまらないものに負けてたまるか!」
タケシは叫んだ。
すると、タケシがいる空間全体にノイズが走った。
コンピューターがバグを起こした時と同じ様に徐々に景色が崩壊していった。
周りが徐々に歪んでいった。
上下の感覚も少しずつ分からなくなっていった。
タケシの周りには故障したテレビに映る砂嵐のような光景が広がっていた。
タケシは何が何だか訳が分からず、頭が真っ白になっていた。
「大丈夫か?」
「あれっ?」
気がつくとそこにはみんながいた。
タケシは謎の空間から戻ってきた。
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